広島駅前の市電沿いに少し南下した角に今時珍しい「純喫茶」があります。
昭和32年建築鉄筋コンクリート3階建(一部5階)で、店主が神戸へ行って洋風建築を勉強し参考にしたという凝った造りです。しかし、築50年となり、駅前再開発計画のためここ20年くらい手を入れていないので、古いのなんのって外観も店内も名前のパールとはおよそかけ離れた汚れぶりで、入るのに戸惑うほどです。しかし、ヒロシマ名物の仁義なき戦いのやくざ幹部が愛人を連
れてたむろしていたというあたりの雰囲気は残っています。このすぐ裏に駅前を縄張りとするテキヤ村上組の本拠があった頃には、ドンパチもしょっちゅうで怖かったそうです。
プロペラは、螺旋階段の隙間、客の忘れた傘などが投げ込んである薄暗い所に埃まみれで立っています。ティッシュで側面を拭いてみたらサルムソンのプロペラと分りました。製造は大正15年10月とあり、明野駐屯地資料館にある大正11年9月製よりは新しく、防府北基地の昭和4年よりも古いです。以後67年間、サルムソン機からはずされた後もどこをどう歩んでパールに納まっているのかロマンをかきたてられますが、先代が亡くなっているので入手経路は分かりません。
この一帯はいよいよ再開発が動き出 し、1年後くらいには建物が取り壊される運命にあります
。広島市内で50年前の面影を残す唯一の喫茶店としてマスコミがよく来るそうです。
しかし、螺旋階段の隙間の忘れられたプロペラに注意が行くことはないでしょうから、サルムソン機写真入りの簡単な掲示板を作って主人に渡しておきました。これからは大切にしてくれるものと思います。
広島駅南口に降りたって左側の市電沿いですから、機会があれば寄ってやってください。
撮影2007/07/27 佐伯邦昭