伝説の時代から現代まで 航空史抜き書きto  topp

 

航空歴史館 掲載11/06/22

  
航空機の社名表示について イギリス機の場合
 


TKさんからのメール

 表紙のガネットのメーカー名がウェストランドのままです。もしかすると、同じ2重反転ペラ装備の同社のワイバーンと思い違いなされたかもしれませんが、ガネットはフェアリー社製でした。 私が目にした欧米の航空博物館や航空関係の書籍で見る限り、Fairy Gannetと表示され、Westland Gannetとの表示は目にしたことはありません。念のため、ガネットのサイトを添付いたします。
      http://www.aviastar.org/air/england/fairey_gannet.php

[表紙絵156] ターボプロップ双発二重反転プロペラの対潜哨戒攻撃機 ウェストランド ガネット  

Westlamd Gannet two Mambas mounted side-by-side and coupled through a common  gearbox to coaxial contra-rotating propellers. Phot on HMAS MELBOURNE R21 at Japan Navy Kure Base 1967.

 

佐伯から : 

 反論して恐縮ですが、ガネットをフェアリーで呼ぶか、ウェストランド で呼ぶかは、どちらも間違ってはいないと思います。
 ガネットがフェアリー社で開発生産されたのは確かですが、1960年に英政府の指導でフェアリー社はウェストランド社に吸収されました。一般論として、その時からガネットもウェストランド を冠するようになっているのではないでしょうか。

  例えば、日本の唯一の世界年鑑である酣燈社の世界航空機年鑑も1961年版からウェストランド ガネットに替えています。

1955年版

フェアリイ ガンネット A.S.1.

1957年版

フェアリイ・ガンネット A.S.1.

1959年版

フェアリー ガネット A.E.W.3 

1960年版

フェアリー ガネット A.E.W.3 

フェアリー ガネット A.S.4 

1961年版

ウェストランド(フェアリー)ガネット A.E.W.3 

ウェストランド(フェアリー)ガネット A.S.4

1962年版

ウェストランド ガネット A.E.W.3 

1963年版

ウェストランド ガネット

以後1969年版まで同一の表示

 いわゆる航空情報に育てられた世代の私は、茶色部分の表示に馴染んでウェストランドを用いているわけです。表紙絵156の写真は、1967年の撮影ですから、もうフェアリーと呼ぶ人は少なかったかもしれません。Faireyといえば、ドイツ艦隊を震撼させた不滅の雷撃機Fairey Swordfishを思い出す世代です。


・ 一般論

 会社合併等で新しい経営者が引き継いだ生産継続中の航空機の名を新社名に替えるかどうかは、一にかかって販売戦略によるものと思うのです。その例を、航空歴史館O3-10にCorns商会の販促写真で紹介しています。

 デ ハビランド社とフォーランド社を傘下に入れたホーカー シドレー社は、機名をすぐには新社名とせず、1963年まで旧社名を冠することを許可していました。従って世界航空機年鑑のCorns商会の広告及び本文記事の表示がホーカー シドレーに替えられたのは1964年版 からです。

  日本の雑誌に広告のあるもの
      1963年版まで             
→ 1964年版から
     De Havilland Trident            → Hawker Siddeley Trident
           Folland Gnat                       →  Hawker Siddeley Gnat
     Armstrong Whitworth Argosy → Hawker Siddeley Argosy
     
       日本の雑誌に広告の無いもの

           Blackburn Buccaneer           → Hawker Siddeley Buccaneer
           Avro Vulcan                       → Hawker Siddeley Vulcan
           Gloster Javelin                     → Hawker Siddeley Javelin

 既に生産が終了している航空機も現役で活躍していれば変更しているようですが、過去の機体までは変えていないでしょうね。 その実益がないですから。以上、ご指摘を受けてイギリス機の場合について試論を展開しました。

 離合集散を繰り返す世界の航空機工業界にあって、ヒコーキの社名名称も変転するので、書籍でもインターネットサイトでも様々な呼称が現れます。 

 シュド、ノール、アエロスパシアル、ベルコウが消えてユーロコプター
 バートル、マクダネル、ダグラス、ヒューズが消えてボーイング

 ついていくのが大変ですが、時にはこうして名称をチェックするのも頭の体操になるかもです。