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航空歴史館その他内外の航空史など 落穂拾い 

 

CORNES & CO.,LTDの販促写真

写真裏面のスタンプ


 

    1 デハビランド コメットの売り込み
    2 デハビランド  トライデントの売り込み

    3 フォーランド ナット練習機の売り込み

 佐伯邦昭


1 デハビランド コメットの売り込み

 これらの写真は、代理店CORNES & CO.,LTDの日本支店が販売促進のために配布したものです。 私は、これを酣燈社の故関川編集長から頂きました。

Comet 2 G-AMAX c/n06023 British Overseas Airways Corporation

 G-AMAXは、現在アラブ連合共和国のSHJ空港に機首が展示されています

各国語による性能諸元  裏面にタイプしてあります

 

Comet 4 G-APDR c/n6818

G-APDR 撮影1959/06/17のスタンプ (写真使用にいかなる料金も必要なしとある)

 

Comet 1 G-ALZK c/n6002

G-ALZK 撮影1951/04/02 



Comet 4 G-APDA  c/n6401


日替わりメモ20100305番

○ コメットの販促写真

 羽田に飛来するBOACのコメットをみて惚れ込んだ日本航空が、抱き合わせのデハビランド ヘロン3機と共に購入契約を締結した途端にコメットの墜落が相次ぎ、結局は抱き合わせ分だけを買わされて終わったという喜劇がありました。デハビランドは空中分解(金属疲労)の原因を突き止めて改良し、エンジンもパワーアップしたU型W型の売り込みをはかりましたが、日航はダグラスDC-8というはるかに性能のいい機体に切り替えてしまい、日本のコメットは実現しませんでした。

 いつごろか忘れましたが、私が銀座の酣燈社を訪ねた時に、関川編集長がCORNES & CO.,LTDが配っていたコメットとトライデントなどの写真を手土産にしてくれました。すでに、情報としての価値を失い、しかもスタンプインクが画面を汚しているようなものだったからかもしれませんが、広島のマニアが公表する考えも手段もないだろうと油断されたのでしょうね。

 特に念押しもなかったように記憶しますが、長い間大切に保管してきたものを死蔵するに忍びなく、航空歴史館として公表しました。あの世で関川さんが苦笑いをしているでしょう。
 裏面のタイプやスタンプからも多くの情報が読み取れると思いますので、じっくりとご覧ください。


2 デハビランド トライデントの売り込み

De Haviland 121 TRIDENT 初号機 B-ARPA
 裏面に日付のスタンプはないが、ロールアウトの日もしくは1962年1月9日の初飛行前の撮影と思われます

 

各国語による性能諸元  裏面に貼り付けてあります

 名称がD.H.121 DE HAVILLAND TRIDENTとなっているが、デハビランドは既にホーカーシドレー社に買収されており、コーンス商会もTHE HAWKER SIDDELEY TRIDENTとして売り込んでいます。(ホーカーシドレー社は1963年までデハビランド名の使用を許していた)

参考 酣燈社 世界航空機年鑑1964年版 転載許可済み

B-ARPA





G-ARPB




G-ARPB



G-ARPB



G-ARPC





日替わりメモ20100306番

○ 続 CORNES & CO.,LTDの販促写真

  昨日に引き続き、死蔵するには惜しい3発ジェット旅客機トライデントの販促写真を発表しました。これもコメットと同じようにデハビランド技術陣が世界に先駆けて3発エンジンや盲目着陸装置などを開発した野心作なのですが、その分設計に時間がかかりすぎて、まもなく3発形式に着目したボーイングが名機727を売る出したために、イギリスではBEAのみ、世界では中国など少数しか採用されませんでした。

 日本では、もちろんJALもANAも727を採用したので、中国民航機が東京国際空港で見られたくらいのようです。余分なことですが中国共産党の林彪がソ連へ逃亡を図って撃墜されたのがトライデントでした。

3


3 フォーランド ナット練習機の売り込み

 撮影日付からして、コーンス商会が酣燈社にこの写真を持ち込んだのは1963年3月以降になりますが、その時点での日本 のジェット練習機は、ロッキードT-33Aの国産は既に終了し、富士T-1Bの生産も最終段階に入っていました。

 しかし、ロッキードF-104Jで超音速戦闘機時代に入っており、T-33Aに替る高等練習機として日本に提案していたものと思われます。

フォーメーション飛行 撮影1963/03 Folland Aircraft Limited



ラインアップ 撮影1963/03



射出座席 撮影1963/03





FOLLANDからHAWKER SIDDELEYへ

 トライデントと同じように、1963年までの表示はFOLLANDであったが、この時点で既にホーカーシドレー社に買収されており、1964年以降はHAWKER SIDDELEYに統一された。(ホーカーシドレー社は1963年まで フォーランド名の使用を許していた。)

参考 酣燈社 世界航空機年鑑1960年版 転載許可済み


世界航空機年鑑1965年版 転載許可済み

日替わりメモ20100307番

○ 続々 CORNES & CO.,LTDの販促写真

 更に、死蔵するには惜しいCORNES & CO.,LTD販促写真のナット練習機を発表しました。 ただ、出版社へ持ち込まれたとはいえ、果たしてナットを本気で日本に売り込んでいたのかどうか、つまり販促写真 というカテゴリーに入るのかは少し疑問が残ります。防衛庁がFolland Gnatを航空自衛隊練習機として検討したというニュースの記憶がないからです。

 超音速ジェット戦闘機時代に入って、T-33Aを高等練習機というにはあまりにも能力不足であり、富士T-1B過程から移行する新しい練習機が求められていたのは事実です。防衛庁内にはノースロップT-38タロンの輸入を推す声が強かったようですが、すったもんだの末、T-2高等練習機の国産に落ち着いた経緯があります。

 ナット練習機は、マッハ1.5の速度が可能で、機銃は30ミリを搭載し、ミサイルも携行可能、空中受油装置も備えるという練習機で、その原型であるナット戦闘機は、インドで国産されてパキスタンのノースアメリカンF-86を撃墜するなど軽戦闘機の名機でした。その練習機型ですからT-38と比較検討されてもいいように思いますが、空自には複座のF-104DJもあり、敢えてイギリス機をという空気はなかったのでしょう。

 1963年の航空情報の広告ページを見てみましょう。
航空情報1963年2月号 Northrop社がT-38、F-5A/Bを2ページ見開きで宣伝
航空情報1963年3月号 Northrop社がT-38、F-5A/Bを2ページ見開きで宣伝
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年4月号 Northrop社がT-38、F-5A/Bを2ページ見開きで宣伝
航空情報1963年5月号 Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年6月号 Northrop社が非常警報装置を1ページ広告
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年7月号 Northrop社がT-38、F-5A/Bを2ページ見開きで宣伝
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年7月号 Northrop社がT-38、F-5A/Bを1ページ広告
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年8月号 Hawker Siddeley社がナット練習機を1ページ広告
               Northrop社がT-38、F-5A/Bを1ページ広告
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年9月号 Northrop社がT-38、F-5A/Bを2ページ見開きで宣伝
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年10月号 Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年11月号 Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1963年12月号 Hawker Siddeley社がナット練習機を1ページ広告
               Cornes商会がTRIDENTを1ページ広告
航空情報1964年1月号 Northrop社がT-38を2ページ見開きで宣伝

てな具合で、各社の思惑や酣燈社営業の手腕などがからみあっているのでしょうが、T-38の方が優勢です。しかし、T-38ナットもTRIDENTもすべて不発に終わってしまいました。しかもHawker Siddeley社は毎月第二表紙にグロスター アーゴシー輸送機の広告をのせているのに、これも不発で気の毒と言うほかありません。

 面白がってはいけませんが、この年は、ボーング727、シュド カラベル、ダグラスDC-9、BAC111やYS-11の広告もあり、各社しのぎを削っての売り込み合戦は 、後世の歴史派マニアにとってまことに興味深いです。

 

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