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質問箱011 掲載14/05/03
追加16/08/08


三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所史料室の零戦 三菱4708エンジンは?

佐伯邦昭

一応解決

質問 2014/05/03

 気のせいでしょうか。エンジンカバーの形状が他の零式艦上戦闘機52型とは違うような気がします。眼の錯覚やカメラアングルのせいでなければ、明らかに円のふくらみが大きいです。

 取り付けた発動機によってこのような形状になったとすれば、中身は栄発動機ではありません。どういうエンジンを取り付けているのでしょうか。



前方のふくらみが大きいように見える

    
    側面図
    

参考 海上自衛隊鹿屋航空基地史料館の零戦52型 (左右を逆転しています)


参考 浜松広報館の零戦52型甲 三菱で再生直後の写真



 
同じ疑問を発しているサイトもあります

http://minkara.carview.co.jp/userid/478054/blog/23860246/

http://t-bird-jet.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-3b32.html


 
さて、皆さんの判定や如何に           

2014/05/07 三菱名航のエンジン  川村忠男さんから

 三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所史料室の零戦 三菱4708のエンジンは、状況証拠にすぎませんが、栄エンジンであると思います。同機復元中に、三菱重工担当の方より、栄エンジンの塗色の調査を依頼され、ANAの元海軍整備兵の方たちに聞いた結果を連絡したことがあります。その折の話では、排気管はステンレス製なので使用できるが、軽合金製部品、シリンダーなどは腐食のため、一部は作り直さなければいけないだろうとのことでした。

 自衛隊のP&W R2800, Wright R3350などをオーバーホールしていた大幸工場は、無くなっていたので、復元は、小牧北工場(誘導推進システム製作所)で行われていたようです。大幸では、自衛隊エンジンのシリンダーを製造していたので、本格的な復元は技術的に問題なかったと思われます。いずれにせよ、三菱重工は、自社の誇りである零戦を、別エンジンを持ってきて適当に仕上げるような会社ではないと思います。

 エンジンカウルの件、私も同機を見ていますが、一目でこれは52型用とは違うなと感じました。2機分の残骸から1機に仕上げたと聞きましたが、カウルが復元可能な状態でなかったので製造したようです。三菱重工は、秋水の復元時、図面の無い部位は手を加えなかったというように、厳密な復元を行っています。膨大な量の図面も保有しており、製造にあたってはこれらを使用しているはずです。

 私は、もしかすると、金星エンジン機(64型)のカウル図面を使用したのかなと思っていましたが、近年発見された同型機のそれとも違うので、謎のままです。

 私は、ANARRダートエンジン技術担当だったので、オーバーホールを依頼していた三菱重工技術者とは長年仕事を共にしていました。復元当時は別のエンジン担当だったので直接関係はなかったのですが、私が航空マニアであることを知っていたので相談してきたものです。図面の件は、羽田でハ50エンジンが発掘されたとき、三菱重工に問い合わせしたところ、すぐ同エンジンの外形図を提供してくれたいきさつがあります。また、海外の零戦復元に、図面提供の協力を行っているそうです。

 

2016/08/08  一応解決 佐伯邦昭  解決

 栄21型発動機の寸法のミスで、新造部分が原型より大きくなってしまい、カウリングを膨らまさざるを得なくなったためと判明しました。

展示機の説明板から 撮影2016/08/04 佐伯邦昭

 海軍がヤップ島から撤退する際に爆破した残骸を1963年に帰還させ、三菱重工で修復したもので、その際、栄二一型発動機の一部(潤滑油溜ケースか?)の寸法を誤って製作したたため、カウリング下部を膨らませて製作せざるを得なくなったものです。これについて歴代史料館長は何とか是正したいとの気持ちはあるものの、かなりの経費を要するため実現していませんし、かつ、事の真相は伏せられています。

修復にあたって使われた構造品 撮影2016/08/04 佐伯邦昭

 発動機のどの部分が間違っているのか内部の構造を調べることはできませんでした。
 撮影2016/08/04 佐伯邦昭
 

 なお、断っておきますが、栄21型修復の際の設計ミスでカウリング下面がおかしくなり、歴代館長さんの是正希望にも拘らずそのままになっているからといって、この三菱4705機修復の価値を否定するものではありません。下に並べられているたくさんの残骸部品とともに、貴重な航空歴史遺産であることに異論はございません。


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