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図書室9  世傑103  掲載2004/02/25  評者 佐伯邦昭
図書室11 世傑104  掲載2004/04/10  評者 ELINT人

 

 

世界の傑作機103
F-104 スターファイター


平成16年3月5日 株式会社文林堂発行 950円

書評

 もう紹介の必要がないほどポピュラーになった文林堂の世傑ですが、103は、あまたの日本のマルヨンを待望する声を裏切って、開発や機構主体の編集となりました。

 心配しなさんな、次回はF-104J/DJをメインに据えた特集を届けるからと編集後記に書いてあります。それは文字どおり104 イチマルヨンになるのかな。やれやれ!

 しかし、103も濃い内容です。私の手には負いかね ます。そこで角度を変えて、やや独善的な部分紹介を試みてみましょう。 

 濃いながらも多くの記事や写真は、たいへん失礼ながらどっかの本で見たことがあるような 気がしてなりませんが、70ページから83ページまでの「F-104のウエポン・システム 解説:山内秀樹」は 、まるではじめてディズニーランドを訪れた時のような興奮を覚えます。

 それだけ素材が豊富で取り上げ方もユニークなのです。

 例えば「5 F-104の射出座席」です。

 例のF-104の下向きの射出座席が上向きに変えられ、最終的にはマーチンベーカー製のゼロゼロ ・ベイルアウト式になりますが、その間のものすごい経験と改修の歴史には圧倒されてしまいます。

 爆撃機の航法士席などの射出座席は下へ撃ち出すものが多く、中には一気に加速されるため人間の首がついてい かないものがあり、その実験フィルムを見せられた乗員が恐れをなして、まず無人のまま座席を射出し、その後で開いた穴から脱出するなどのエピソードは、下手な小説よりも面白いです。

 射出座席記事以外の火器管制装置、パワ−プラント、核装備、ナサールレーダーも以下同文です。他の筆者との違いがよくわかります。

 山内氏は、国防省が大量に発行するマニュアルの差し替え分まで収集して、しかも丹念に分析しているものと推察されます。そういう基礎知識 をもってしなければ関係者から必要な証言を聞き取ることなどできませんから。

 内緒ですが、日本の航空工業の技術者が山内氏の記事で勉強しているそうです。 最新技術は習得していても、それがどのようにして開発され改良されてきたかの歴史を米軍マニュアルなどで勉強する暇はなく、山内氏のまとめがたいへん参考になるというのです。

 少しほめ過ぎたかもしれません。

 難点は、サービス精神が旺盛で読むものが消化不良を起さないかと心配なことです。

 しかし、消化不良覚悟でもぜひとも読んでいただきたいと推薦をいたします。
 

 

紹介者 ELINT人

世界の傑作機104
 


平成16年5月5日 株式会社文林堂発行 950円

 「世界の傑作機No.103を見て、「あれれ、航空自衛隊は?」と思っていましたが、巻末の次号予告を読んで、「さすが 世傑!」と感じていました。No.104を航空自衛隊マルヨン号にするという、編集部の粋な計らいに、思わず拍手でした。

 今回のNo.104は、松本零士氏と岩崎貴弘(ロック岩崎)氏のカラーコラムをはじめ、整備員からは、高橋喜一氏の述壊もあり、色々な角度から見たマルヨンについて述べられています。

 また、搭載エンジンのJ79-IHI-11Aについても、石澤和彦氏が8ページにわたりJ79の生い立ちから性能、評価にいたるまで、丁寧に書かれていて、ここだけでも読みごたえがあります。

 さらに、わが国初のフルスケールドローン、UF-104J/JAに関しても、マルヨンではおなじみの櫻井定和氏が記述しています。

 豊富な写真については、未発表のものは、それほど多いというわけではありません。
航空ファン誌や他の航空雑誌のバックナンバーをお持ちなら、見たことがある写真が多いです。また、マルヨン各飛行隊の紹介については、過去に酣燈社より発刊された、自衛隊メモリアルシリーズNo.2 「F-104J/DJ」内の記事の縮刷版のようになってしまっています。

 少々気になった部分は、#506の記述で、「知念駐屯地でT-2ブルーインパルス塗装となって展示されている。」とされていますが、ヒコーキ雲でもおわかりかと思いますが、現在は解体撤去され、知念分屯基地に行っても見ることはできません。

 全体としましては、F-104について2号に渡って発刊していただき、No.104をF-104J/DJ号にするなど、編集部の航空機に対するこだわりが感じられ、好感が持てます。また、日本人パイロット、整備員、エンジニアの話も新鮮でした。

 この本を機会に、若年層の人々が、各基地に展示されているマルヨンに興味を持っていただければ良いと
思います。(ただ、主翼前縁には気を付けて下さいネ。)

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