図書室55 掲載11/04/21

『新千歳市史』編さんだより 志古津 第13号 

民間空港・千歳空港開設

評者 佐伯邦昭

『新千歳市史』 編さんだより 志古津 第13号

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    民間航空・千歳空港開設(守屋 憲治)

 

論文


民間航空・千歳空港開設
  
         
         
筆者 新千歳市史編集委員会専門部員 守屋憲治

 

 前号の米空軍千歳基地に続いて、戦後日本の再開航空における日本航空便の千歳基地への就航 にいたる千歳飛行場の民間航空史が細かく発掘されました。

 既に秘話と呼ぶにふさわしい悲喜こもごものエピソードがあり、それらが航空を通じて当時の占領下の政治経済社会情勢を如実に示しており、これは千歳だけではなく、伊丹、板付、小牧、岩国などにも共通するものだろうと思わせます。

 

 ざっと順序をたどりますと、

 昭和20年9月14日〜10月9日 緑十字飛行が札幌第二飛行場(札幌市北二条)を使用

 同10月10日〜21年2月6日 米軍によるいわゆる帝国航空便が第一千歳飛行場を使用

 25年にGHQが国内航空運送事業運営に関する覚書により日本に乗り入れている外国航空会社のうち1社に国内運行を認ることになるや、北海道の寄港飛行場を巡って札幌市(札幌第一・丘珠飛行場)と千歳町(千歳飛行場)が猛烈な誘致合戦を展開した結果、気象条件や米軍基地として施設が完備している千歳飛行場が北海道地域空港に決定された。

 26年3月9日閣議了解によって札幌-青森-(給油地三沢)-仙台-東京-名古屋-大阪-岩国-福岡の本土縦貫路線が構想され、5月22日に日本航空に営業免許を下付した。

 26年8月15日日航が札幌に事務所を設置、路線運航準備を始めた。

 日航がPALのダグラスDC-3をチャーターし金星と命名して各地へ試験・披露飛行を行ったが、千歳では盛大な空港開設祝賀懇談会を米軍基地内で行う予定であったが、諸般の事情により飛来は見送られた。

 26年8月15日読売新聞社によるCATのチャーター機C-46「よみうり平和号」が羽田から飛来し、北部兵站部司令部千歳地区司令マーチン大佐による歓迎会が行われた。

 10月23日日航機NWAのマーチン2-0-2もく星が試験飛行で初飛来。予定は前日であったため東京から来ていた警察予備隊音楽隊などによる行事は22日に行われた。
 23当日も、午後1時到着予定が次々に延期され、午後6時35分に着陸したが、既に歓迎行事は終了しており、招待飛行も中止された。夜の花火大会等は実施。

10月25日から暫定運行が開始されたものの、日航2番機すい星の到着遅れで札幌線は欠航し、翌26日にもく星が就航した。羽田-千歳2時間40分、運賃1万2千円。

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 11月1日正規運行開始

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 11月16日千歳基地内に航空庁のターミナルビルが完成した。

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 27年2月2日日航札幌出張所を札幌支社とする。

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 27年3月4日十勝沖地震発生 報道機関9社による日航初の貸切飛行が羽田‐千歳-被災地で行われた。

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 29年8月10日日本ヘリコプター輸送がデハビランドDH114ヘロンで羽田-三沢-札幌千歳線を開始した。

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 34年6月北日本航空がダグラスDC-3で季節運航千歳-稚内線を開始し、以後、日本国内航空、東亜国内航空、日本エアシステムとして路線を拡大していった。

 

 というような過程です。
 今や、国内線約150便、国際線約20便を誇る堂々たる新千歳空港ですが、昭和20年代における歴史は、そのような発展が夢のように思えます。本土に取り残されまいとする北海道人の魂でありましょうか、しかし、守屋さんの筆は、そんな感傷的なことはかけらもなく、たんたんと事実を述べています。

 もし、文学部の大家が執筆したら省略してしまうかなというような部分もなきにしもあらずですが、航空愛好家にとっては、一つも落としてはなりません。それでいいのだと思います。

 今回の記述以降の史実として、新千歳空港に衣替えする時に、運輸省や北海道庁が「札幌空港」にしようとしたのに対して千歳市民挙げて「もってのほかだ」と反対をした経緯がありました。しかし、今でもANAの時刻表は札幌(千歳)、JALとAir Doは札幌となっていて、千歳市民の意志は反映されていないように見えます。

 初期の千歳飛行場からの名称をめぐる歴史にもかなりのエピソードがあるのではないでしょうか。落穂的なものであっても千歳市史にとっては欠かせないと思うので、聞いてみたいところです。 

 さて、戦後の千歳飛行場は、前号の米空軍史に初期民間航空史が並びました。これに初期航空自衛隊史(警察予備隊、保安隊を含む)が加われば完成です。好漢守屋憲治君 一層のご精進を祈ります。