大石さんは、1946年3月の空中写真から日本軍機がブルドーザーで掻き集められた地域とある程度整然と並べられている地域などを特定した冒頭6ページにわたる写真と解説を見るだけでも購入の価値ありと書いております。同感ですね。
例えば、基地西北のゴルフ場のアップダウンがあるあたりの小高い方は、埋めた残骸を隠すために土を盛り上げたのではないかと想像したりします。アツギロマンと言えばロマンですが、オールドマニアには敗戦国の屈辱をも改めて思い知らされるページであります。
ただ、本書はそれだけではなく、南太平洋の戦線から日本占領後まで自分のカメラで、かつ、自分の模型作りのために正確な資料とすることをも念頭に置いてレンズを向けているのが、類書とは基本的に異なる大きな特徴です。
調布で迷彩の飛燕を撮った時、私は「モデラーのための機体だな」とつぶやいたものだ。(53ページ)
翻訳者が「ゼロ」という言葉を書名に付けたのは、最近のブームにあやかったのでしょうが、零戦だけかと思ったら大間違いで、福生や調布に残っていた陸軍機まで、初めてお目にかかる写真がずらりとあり、一部には米軍作成の教育資料までついています。
米軍が意図的に福生に残していた機体は飛燕と剣だけではありませんでした。中島キ87試作高高度迎激戦闘機もあって常時警備が付いていたということです。放置しておくとお土産用の部品どりにあって研究に支障が生じるためだということです。つまり、残骸写真の中には、お土産品剥ぎ取り後のものが多くあるという、これまた屈辱的な当時の事情も知らされます。
この試作機には、著者自身が操縦席に座ってみた感想をかいていますが、このように、写真を並べて簡単なキャプションを付けるのでなく、物語風な記事と写真が両立しているのも類書にない特徴です。
長くなるので、以下省略します。ともかく、買って損はありません。