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図書室77 掲載2014/08/23

Meatballs and Dead Birds 日本語版 ゼロの残照

発行を企画した 赤塚薫さんの言葉

 以前から原書の存在は知っていたのですが、昨年、厚木で月光のスラット発見を機にして出版を決意、あれこれ動いているうちにイカロス出版で出す事になった次第です。ぜひご覧いただき、よろしければ書評をお願いできればと思っております。翻訳者と執筆者の感性が合い、いままでに無いユニークな翻訳本になったと思ってます。訳者は子供の頃からのヒコーキ友達で今回が初めての仕事となります。

     
     

2014/08/23 評 大石治生

 以前より厚木基地の旧軍機が進駐軍の手によって埋め立て廃棄されていたのは添付写真の三誌(松本零士:零士のメカゾーン、ロバート・ミケシュ:サムライたちのゼロ戦、毎日グラフ別冊:ニッポン40年前(カラー写真))で紹介されたおりましたが、具体的な場所は特定出来ませんでした。

 今回、ゼロの残照では最初のページから航空機の集積・廃棄場所が当時と現在の空中写真で紹介されており驚きでした。これだけでも購入する価値はあります。

 先日、羽田空港の工事現場から零式輸送機の発動機などが発掘されましたが、厚木基地でも滑走路下の地下壕や格納庫地区以外の場所から旧軍機の残骸がまだまだ発掘されるかも知れません。

 

2014/08/23 評 佐伯邦昭

 大石さんは、1946年3月の空中写真から日本軍機がブルドーザーで掻き集められた地域とある程度整然と並べられている地域などを特定した冒頭6ページにわたる写真と解説を見るだけでも購入の価値ありと書いております。同感ですね。

 例えば、基地西北のゴルフ場のアップダウンがあるあたりの小高い方は、埋めた残骸を隠すために土を盛り上げたのではないかと想像したりします。アツギロマンと言えばロマンですが、オールドマニアには敗戦国の屈辱をも改めて思い知らされるページであります。

 ただ、本書はそれだけではなく、南太平洋の戦線から日本占領後まで自分のカメラで、かつ、自分の模型作りのために正確な資料とすることをも念頭に置いてレンズを向けているのが、類書とは基本的に異なる大きな特徴です。

調布で迷彩の飛燕を撮った時、私は「モデラーのための機体だな」とつぶやいたものだ。(53ページ)

 翻訳者が「ゼロ」という言葉を書名に付けたのは、最近のブームにあやかったのでしょうが、零戦だけかと思ったら大間違いで、福生や調布に残っていた陸軍機まで、初めてお目にかかる写真がずらりとあり、一部には米軍作成の教育資料までついています。

 米軍が意図的に福生に残していた機体は飛燕と剣だけではありませんでした。中島キ87試作高高度迎激戦闘機もあって常時警備が付いていたということです。放置しておくとお土産用の部品どりにあって研究に支障が生じるためだということです。つまり、残骸写真の中には、お土産品剥ぎ取り後のものが多くあるという、これまた屈辱的な当時の事情も知らされます。

 この試作機には、著者自身が操縦席に座ってみた感想をかいていますが、このように、写真を並べて簡単なキャプションを付けるのでなく、物語風な記事と写真が両立しているのも類書にない特徴です。

 長くなるので、以下省略します。ともかく、買って損はありません。