〇 モデラーの視点から 田中昭則さんの注文
確かによくできていると思います。映画用の模型等を含めて、これまで作られたレプリカの中では最も実機に似ていると思います。ただ、指摘されているように細部の考証が不十分なのが惜しまれます。着艦フックはよくできているようですけどね。
モデラーの視点で気になる点を挙げてみます。
@ 一番気になる点は、翼端灯、編隊灯、尾灯が塗装表現なので、実感を大きく損ねています。透明樹脂でカバーを製作するのにそれほどのコストは思えません。木型を作って塩ビ板をヒートプレスすれば楽にできるし、後々の破損時にも木型が使えるわけです。
A 計器盤に航路灯があるのに、頭当て後方のループアンテナが省略されています。無線のクルシー管制器は外から見えないので省略されても構いませんが、単発機で日本で始めて無線帰投方位装置を積んだ零戦なので、
アンテナだけは抑えてほしかったですね。
B 尾翼のバランスタブが省略されているように見えます。1/72のプラモデルでも普通に再現されています。
C 主翼付け根の機内空気取入れ口は、右翼のみで左翼には開口していません。
D 翼内機銃の銃口カバーの穴はもっと大きいです。これでは7.7ミリ機銃みたいです。
E 胴体の銘板に「中島第 號」とあるのに、胴体の日の丸に白縁がありません。21型は三菱製と中島製を区別するために日の丸を変えていたというのは零戦マニアの常識です。
F 機首下面のオイルクーラーは、冷却器のコアが再現できないのなら黒で塗りつぶしてほしいです。結構目立つところです。
G プロペラは、スピナもブレードもよくできていますが、ブレード付け根の特徴ある住友製ハミルトン定速三翔の銘板を再現してほしかったです。
H 98式射爆照準器は、マツモデルデザインの精巧なレプリカを使われては如何ですか。
I 尾輪フォーク部は、古い産業機械でキャスター付の似ているものがあったりします。また、その付け根部は新品時にはズック布製のカバーが掛けられていたので、形状の違いはカバーで誤魔化せると思います。
J 主車輪も、せめてタイヤだけでも軽飛行機用を使うとかの工夫がほしかったですね。
以上、いろいろ言いましたが、全体フォルムは見事なもので、その点は賞賛されていいと思います。ただ、細部の詰めが甘いように思われます。零式艦上戦闘機に関する限り、マニアの研究レベルは相当に高いですから、ある程度関与させた方が良かったと思うのです。航空機、特に旧軍機に知識が無い企業に製作させる場合の教訓としたいですね。
佐伯から : 阿見町の零戦模型製作は26、27年度予算に計上されています。戦後70年の8月15日に間に合わせたいということだったようですが、10月までずれ込みました。26年度の予算成立直後に契約したとしても、1年と7ヶ月、旧軍機に知識のない企業が調査研究からスタートしたとしては、これが精一杯だったのかもしれません。また、外野からの口出しをいちいち聞いていたら収拾がつかなくなると恐れて監修者なしで内密に進められたのかもしれません。
さて、それはもう過去のこととして、田中さんの諸注文は、とり立ててお金の掛かる工作にはならないようだし、これからも何かと意見が来ることでしょうから、徐々に取り組んでいかれたら如何でしょうか。ヒコーキ雲としても、お役に立つならば援助を惜しまないつもりです。