尾道市のリゾート施設を拠点に芸予諸島の上空を水陸両用機で遊覧飛行する観光事業が開業から1周年を迎え、施設内の浮桟橋「オノミチフローティングポート」で10日、記念イベントが開かれた。この日に合わせて現在保有する5機のうち1機を、スタジオジブリの宮崎駿監督が監修したデザインで赤く塗装。「ラーラロッサ(紅の翼)」の愛称で運航する。
遊覧飛行は、造船大手の「常石造船」(福山市)を中核とするグループ傘下の「せとうちSEAPLANES(シープレーンズ)」(尾道市)が昨年8月10日から運航。使用しているのは、米クエストエアクラフト社製の10人乗り小型機「コディアック100」に離着水用のフロートをつけた水陸両用機で、芸予諸島の上空を約50分かけて遊覧飛行するほか、広島空港(三原市)などから送迎するチャーター運航にも応じている。
開業から1年で遊覧飛行の搭乗客は約1800人。6月から運行が始まったJR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」の尾道に停車するツアー参加者は別料金のオプションで搭乗できるが、これまで毎回搭乗定員を超える申し込みがあるほどの人気ぶりだ。9月からの日曜日には、料金をやや安く設定した30分のショートコースも運航する。
宮崎監督による監修は、運用機の模型を見た監督が快諾して実現。赤い塗色をベースとし、3色に塗り分けた垂直尾翼にロゴマークをあしらったデザインを提案してもらった。さらにロゴマークの「SETOUCHI SEAPLANES」の文字は、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが揮毫(きごう)。文字に囲まれた円内に瀬戸内の海上を飛ぶ県鳥のアビを図案化した。
この日の記念イベントでは、特別塗装機「ラーラロッサ」の“お披露目飛行”や撮影会、地元小学生を招待した体験搭乗なども行われた。
松本武徳社長は「来春には松江市の中海で遊覧飛行を始める予定にしており、今後も機材とパイロットを増やして事業を拡大していく。さまざまな可能性を秘めた水上機の魅力を広げていきたい」と述べた。