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Question about Q400 in Kochi


佐伯邦昭

A7404-07 高知竜馬空港
       Q400 Acsident in Kochi Airport, Nangoku City, Kochi Prefecture

2010/07/29

○  全日空がDHC8-400(Q400)の信頼度ナンバー1でボンバルディアから表彰

 ボンバルディア社が6月14日に行った2009 Airline Reliability Performance Award において、全日空がアジア地区bPのエアラインとして表彰されました。

 理由は、ANA系列のQ400の定時出発率99.60パーセントがアジア地区で最高を記録したということです。他地域での表彰がなかったため、実質的には世界一ということです。

 定時出発率=15分以内の出発便数/総出発便数×100
 (15分以内出発便数(機体がスポット、ボーデングブリッジから離れる時間)と全出発便数の比率を示します。15分以上遅れた場合は遅発となります。遅発理由は各種ありますがその合計です。機材トラブルだけではありません。)定時出発率は、世界エアライン品質の一指標で高いほどエアライン品質と機材品質が高いとする世界標準です。


日替わりメモ20100729から転記

○ ボンバルディア社がQ400で全日空を表彰という‥パロディ

 この件ではANAとボンバルディアのPress Releasesには全く記録がありません。その不可解さは、高知空港での顔面着陸の大きな影響と高知新聞の熱のこもったキャンペーンに遠慮したのであろうと、素人ながら想像がつきます。

 だから、敢えてパロディとしましたが、実態はそんな失礼なお話しではなく、ANA系列でのQ400の定時出発率が99.60%という完璧に近い成果を上げていることをもって、アジア地区(実は世界で)ナンバーワンの信頼度を獲得してトロフィーを授与されたという、喜ぶべきニュースなのです。

 授賞式の前には、全日空がQ400を確定5機、オプション5機発注したという記者発表が(これは堂々と)公表されています。一時は、高知〜大阪線のQ400を就航停止にしてしまえという声が真実味を帯びるほどでした。関係者の必死の努力で汚名挽回が成ったものと言って差支えないのでしょうか。一寸先は闇の航空界ですから、この先何が起きるかはわかりませんが、ひとまず、インターネット航空雑誌ヒコーキ雲の独占種としてお目にかけた次第です。

 

日替わりメモ2010年6月20日から転記

○ 高知新聞が放つ警鐘

 「空の隙間」 ボンバル機事故からの探求 http://www.kochinews.co.jp/07bonbaru/rensaifr.htm

 高知〜大阪の主要な運送手段であるボンバルディアQ400が、初期トラブルに見舞われていた時期から、それを欠陥問題として追及を続けていた高知新聞社会部が、あの2007年3月の胴体着陸事故から「空の隙間」と題するキャンペーンを開始し、このほど3年間にわたる連載が完結しました。

第1部 実録 3.13
第2部 巨大メーカーの実像
第3部 原因と責任のジレンマ
第4部 誰が安全を決めるのか
第5部 「競争」と「安全」は両立できるか

 取材は、航空局、全日空とその系列、警察、学者や知識人と称される人からカナダのボンバルディア社など多方面にわたって実地に問答を繰り返して、その結果を記事にまとめています。素人の社会部記者が、一機種の欠陥からスタートして、世界の航空政策、生産体制、運行体制にわたって熱心かつ真剣に取り組んでいることに心を打たれます。ほとんど知られていなかった事実もたくさんでてきて、航空雑誌上での専門家の机の上だけでまとめた記事とは一線を画します。

 ただ、例えばボンバルディア本社へ行っても厚い壁があります。日本の航空当局ですら歯が立たない外国航空会社ですから、真実を探りえないもどかしさは、随所に出てきます。もっと追及できないのか、そこの所をもっと掘り下げたらというのは、日本の航空局でも航空会社でも同じことです。都合の悪いことはしゃべらない、もしくはオフレコと釘を刺されているのでしょう。

 したがって、「空の隙間」とはまことに言いえて妙です。まさに、行間(隙間)に隠された本音を読み取ってもらいたいという取材記者たちの叫びなのでしょう。それを読み取って上げましょう。

 このキャンペーンが、高知新聞の読者と取材を受けた関係者だけでなく、広く読まれて(できれば翻訳されて海外にも)、第5部「競争」と「安全」は両立できるかを自分のこととして考えてみようではありませんか。これまでの新聞にも雑誌にもない歴史的な評論「高知新聞が放つ警鐘」として自信をもって紹介いたします。(佐伯)


この紹介に対する反響 2010/06/22

@  削除 

A Aさんから

 「空の隙間」終了へヒコーキ雲の締めは良かったですね。土佐のイゴッソ高新とヒコーキ雲は当節の龍馬伝に劣らぬコラボでした。このような大人の視点の佐伯節もファンを増やすと思います。

 高新、航空局、双日(株)(日本のボンバル代理店:航空機輸入商社ニチメンと日商岩井の合併会社)、Q400使用エアラインなどにも刺激になったでしょう。

B Bさんから

 「空の隙間」の紹介により、地元にいなければ見ることも出来なかった貴重な記事を知ることができました。ありがとうございました。今後とも地道な調査よろしくお願いいたします。

 

2008/01/29  高知胴体着陸事故調が報告案

日替わりメモ348番 2008/01/29から転記
○ ボンバルディア社修理ミス原因 高知胴体着陸事故調が報告案

(共同通信配信要旨)
 全日空のボンバルディアDHC8―Q400が前輪が出ないまま高知空港に胴体着陸した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は26日までに「ボンバルディア社が、製造直後に行った修理でボルトを付け忘れた可能性が高い」とする最終報告書案をまとめた。

 これまでの調査で、事故機は前輪格納扉の開閉部に必要なボルトがなく、飛び出した「ブッシング」と呼ばれる部品が引っ掛かって格納扉が開かなかったことが分かっている。事故以前にボルト付近で行った作業は、ボンバルディア社での修理だけだったことから、事故調は修理ミス以外に原因が考えられないとの結論に至ったという。

 事故機は格納扉の開閉装置に取り付けられているボルトを通すブッシング(直径約1センチ、長さ約3センチ)が約1センチ飛び出したことで、周囲の部品にぶつかって開閉装置が動かず、格納扉が開かなかった。

 事故調がボンバルディア社に調査官を派遣して調べた結果、製造直後に車輪を出し入れするテストをした際、開閉装置の一部を誤って破損し、ブッシングを含む部品を交換していたことが判明 した。

 交換した際の作業内容を示す記録はなかったが、機体納入後、全日空はこの部分の整備や分解を一度もしていなかった。全日空のほかの同型機を調べたところ、ボルトが接触する部分の周囲の塗料がはげているのに、事故機では塗料が残っており、ボルトがあれば付いたはずのブッシング内部の細かな傷もなかったという

 事故調は報告書案を英訳し、近くカナダ当局を通じてボンバルディア社に送付。カナダ側が強く反論することも予想され、報告書が公表されるのは早くても4月以降となる見通しだ。国際民間航空機関(ICAO)の規定で、カナダ側が別の原因を強く主張した場合、報告書では日本側、カナダ側双方の結論を併記する可能性もある。



● この報告案について 一業界人の反応

 事故調結論は予想範囲でした。あとはボンバルデイアの反応次第ですが、当該部損傷修理の作業記録がないとは驚きです。もし事実ならこれだけでボンバルデイアの品質管理体制(技術品質、作業品質、検査品質)は信用出来ませんね。結構売れている現代ハイテク機メーカーなのにです。

 また、ANA側としては現地領収検査の体制がどうなっていたのか?製造途中は、メーカー任せで機体完成後の最終領収検査だけだったか? また駐在検査員がいたとしてもメーカーが隠した問題は記録上にないとそのままで、しかもその場所が外部点検できない内部だと今回のようなことになるでしょう。

 通常内部点検は整備要目に従い行うので、その定時点検時期(累積飛行時間などによる)にならないとそこを開けての点検はされません。

 そしてボンバルデアとカナダ監督官庁の反応は如何に?  当該部にはボルトも残ってないし、締めた跡もないとなれば原因は明らかと思います。以上 、報道の範囲での所感です。


● 佐伯から : 私は、高知新聞がQ400の度重なる故障欠航を告発しはじめた2006年2月から、ボンバルデア社の品質管理体制に問題があるのではないかと思っていました。

 油圧パイプが裂けたり、電気配線の不具合で動翼や脚やメーターに信号が伝わらなかったりというトラブルが頻発するのは、設計そのものに欠陥があるわけではなく、下請けから納入される際の部品検査体制と組立作業員の能力に問題が存在するのだろうという訳です。

 下請けに過酷なコスト削減を強いれば、見えざるところで手抜きの製品を作ってこざるを得ないでしょう。工場に低賃金の外国人や派遣労働者を配置していると、見えざるところで手抜きの作業が行われるでしょう。

 それらをマンツーマンでチェックすることなどは経営上不可能ですから、こういう事例は今後ますます増えるだろうと思います。或る一定の経営パイの中で、ひとつに力を入れれば、その分どこかを削らなければならないのが企業というものです。製品の安易な値上げができたり、銀行が低利でどんどん貸してくれるなら別ですが。

 それは航空界に限らず自動車でも家電製品でも食品業界でもマンション建設でもあらゆる分野に言えることで、たまたま遭遇した現場で犠牲になる人間や関係者が身の不幸を呪うしか手はありません。

 しかし、呪うと同時に、その製品の利便性ゆえにおおいに楽をさせて貰っている、儲けさせてもらっている、楽しませてもらっている等々を思い起こしてください。不幸にして露見してしまったら、十分な対策を講じたり、責任者が罰せられるのは当たり前ですが、消費者側は、そんなのは一過性のものであって、またどこかで起きるんだと覚悟しておくべきでしょう。
  いやなら、どこかの無人島で自炊生活をしてくださいませ。

 復活白い恋人が売れ切れたとか、船場吉兆が営業再開したら常連客で満席になったというニュースと、この事故調報告案がどこかつながっているように感じるのは佐伯だけでしょうか。


2007/11/03 SASの永久使用停止と高知新聞の報道

はじめに

 去年1月に高知新聞が火をつけたダッシュ8-400(Q400)の欠陥問題について、故障多発から遂に胴体着陸に至る一連の経過を、はじめは、マスコミの過剰報道気味であると批判していた私も、そうではないと認識を改めざるを得なくなったことは、下記のとおりです。
 このたびのSASの永久使用停止の決定を受けて、同紙の報道を見ますと、夕朝刊で2回取り上げただけで、高知線での使用を見直せといった論調の社説もなく、ややあきらめたとも思える扱いになっています。記事の要約、SASのプレス発表、ボンバルディア社の声明文を載せておきます。

 

1 高知新聞 

    10月29日付け夕刊 まだボンバル使うのか 高知空港でも不安の声(要約)

 世界中で重大トラブルを引き起こしているボンバルディア社(本社・カナダ)に、まず北欧大手のスカンジナビア航空(SAS)が強い姿勢でけじめをつけた。同航空は双発プロペラ機DHC8―Q400型を世界で初めて導入したが、二十八日に運行中止を発表し、その期限は「永久にやめる」とした。ボンバル社は「SASの決定に失望する」としている。 

 SASの発表から一夜明けた29日朝、高知空港では利用客らがボンバル機への不安や憤りを口にした。「揺れもひどいし、音もすごい。事故が多いので怖いと思っていた。便がなくなると困るけど、もっといい機体に替えれるなら、利用者にとっていいこと。(SASのような判断を)国内でもやってほしい」と九州から来た六十代の女性。東京の男性会社員(57)は「ボンバル機は使わないようにしている。乗りたくない」。高知市内の男性会社員も「たまに利用しますが…乗りたくない」と口をそろえた。

 

    10月30日付け朝刊 デンマークで胴体着陸 SAS航空永久停止前日(要約)

 カナダ・ボンバルディア社製のDHC8―Q400型機の使用を「永久停止」することを決めた前日の27日夕、デンマークの首都コペンハーゲンの空港で、SASの旅客機が着陸時に右主脚が折れ、胴体や右翼を地面にこすりつけて着陸、破損しながら滑走路を飛び出して止まった。乗客乗員44人にけがはなかった。SASの永久使用停止はこの事故を受けての決定だが、詳細な情報について、ボンバル社や全日空、国土交通省とも積極的に把握、公表しようとはしていなかった。

 SASは2000年1月に世界で初めて同型機を導入。現在は27機を飛ばし、グループ全体の顧客の5%が利用している。ところが今年9月にデンマークとリトアニアで相次いで右主脚が折れて胴体着陸する事故を起こし、約3週間にわたって運航を中止。今月から再開したが、追い打ちを掛けるように27日の事故が発生。点検後の再開にもかかわらず、同じ右主脚が折れる事故だったことから、SAS社長でCEOのマッツ・ヤンソン氏は「利用客の信用は大きく揺らいだ」とした。

 今回の事故の情報について、最初に日本国内で把握したのは全日空。ボンバル社に常駐させている社員から28日早朝(日本時間)に連絡が入り、国交省にも連絡したという。しかし全日空、同省ともに、カナダ政府やボンバル社から発表される情報を元に判断するだけで、事故の詳しい情報を積極収集していないのが実情だ。9月の胴体着陸事故の際も同様の対応で、事故原因となった主脚や前脚の不具合の原因究明もあいまいなままになっている。

 全日空グループと日本エアコミューターは28日夜から、所有するQ400計24機全機について、SASで繰り返しトラブルが起きた車輪の動作部を重点的に点検。29日朝の始発便までに点検を終えたが、不具合は見つからず、同日は平常通り運航した。同省の峰久幸義事務次官は同日の記者会見で従来通り安全性を強調した。

 

2 関連 
@ SASのプレスリリース

(要点)  SAS グループ理事会は、昨日、着陸装置にかかわる3つの事故に続いて、27機のDash8-400(Q400)を永久にサービス停止することを決めた。

Press release 2007-10-29 
Actions to handle the replacement of the Q400 fleet

The SAS Group Board of Directors yesterday decided to permanently remove its entire fleet of 27 Dash 8-400 (Q400) from service following 3 accidents involving the landing gear. The aircraft operates on Danish and Swedish domestic as well as on European routes. In addition, it is operated by Wideroe in Norway.
 In total 27 aircraft of SAS Group fleet of 303 aircraft are affected, accounting for approx 5% of total aircraft seat capacity.
SAS Group will do everything possible to mitigate the negative consequences for the passengers. Short and medium term SAS will take the following actions to handle the replacement of the Q400 fleet (with estimated time frame)

1. Review of network and reallocation of aircraft capacity within the SAS group (0-3 months)
2. External wet lease capacity (0-1 month)
3. External dry lease capacity (3-6 months)

In parallel, work has already been initiated how to replace the aircraft type long term.
SAS expect to start to implement a long-term solution by second half of 2008.
An early estimate of the negative impact on the SAS Group result is around 300-400MSEK for the remaining part of the year. The estimate takes into account the  above mentioned actions and lower seasonal demand in the coming months. It is based on revenue loss, fixed cost and negative feeder effects and comes in addition to the effects communicated earlier.

SAS Group is in dialog with Bombardier regarding possible solutions regarding the current situation for the Q400 fleet inAHuding compensation.
Due to the AHosed period in connection with the upcoming results, no more comments


A
 BOMBARDIER社の声明

(要点) デンマーク当局が事故原因を調査中であるのに、SASがQ400を永久停止にしたことに失望している。SASが2007年10月27日の事故はランディングギアのシステムに特定されてはおらず、べてのQ400航空機オペレータ通常の運航を続行するべきであると通告し、 さらに、ボンバルディrと着陸装置メーカー(グッドリッチ)はQ400の着陸装置システムの完全な再調査を終え、その安全なデザインと操作上の保全を確認した。

BOMBARDIER STATEMENT REGARDING THE SAS DECISION ON ITS Q400 AIRCRAFT FLEET 

Toronto, October 28, 2007 – Bombardier is disappointed with the SAS decision to permanently discontinue flight operations with the Bombardier Q400 aircraft given that the landing incident is still under investigation by Danish authorities.

While SAS chose to ground its Q400 turboprop fleet following the incident on October 27, 2007, Bombardier’s assessment of this situation, in consultation with Transport Canada, did not identify a systemic landing gear issue. Based on this we advised all Q400 aircraft operators that they should continue with normal Q400 aircraft flight operations. Further, Bombardier and the landing gear manufacturer, Goodrich, have completed a full review of the Q400 turboprop landing gear system and results have confirmed its safe design and operational integrity.

Bombardier stands behind the Q400 aircraft. Since entering revenue service in February 2000, the Q400 turboprop has proven itself to be a safe and reliable aircraft with over 150 Q400 aircraft in operation among 22 operators around the world. To date, the fleet of Q400 aircraft has logged over one million flying hours and 1.2 million take-off and landing cyAHes.

 

下記

1 高知新聞の見出しの変遷

2003/07/20 社会面   高知-伊丹11月就航 新型プロペラ機 「静か、速い」と好評 高知空港で体験搭乗会
↓        ↓       ↓       ↓
2006/01/25 投書欄  便数減っても安全な航空機を 高知市内 56歳 自営業
2006/01/28 社会面   全日空機車輪トラブル ボンバル機製造ミス 油圧系に空気混入 
 高知−大阪線に初導入 トラブル全国で多発
2006/01/30 社 説  本当に安全なのか ボンバル機
2006/01/30 コラム  (2年余りで欠航・引き返しが約100回というのはいかにも多い)
2006/02/10 社会面  松山空港 ボンバル機全車輪出ず 手動に切り替え着陸
2006/02/10 夕 刊  松山空港 ボンバル機不具合 接触不良が原因  信号が伝わらず
2006/02/14 夕 刊  佐賀空港 ボンバル機尾翼装置故障 着陸前、また1号機

 2003年の試乗会で好評と報道され上々のスタートを切ったボンバルディアDHC8-400(以下Q400という)でしたが、トラブルが頻発しているみたいで、本年に入ってからの高知新聞は上のとおり賑やかです。

 特に、高知では伊丹との14便すべてがQ400ですから関心が高く、全国的なニュースには載らないような些細なトラブル、しかも他線で起こったことでも逐一報道されるわけです。県民感情というか、地元マスコミとしてやむを得ない面があると思います。

 1月25日の自営業の方の投書は、自家用パイロットもしくはかなり知識を持っているヒコーキマニアではないかと推察される文章で、「エンジン系統、操縦系統の油圧が低下したら、脚が出なかったら、貨物室の与圧が低下して客室の床が抜け、操縦ケーブルが働かなくなり大事故になった例‥‥。 ヒューマンエラーも怖い。警告灯がまた異常点灯だとパイロットが見過ごす‥‥。」等々一見専門家かと思わせるところがあります。

 その結論が、国土交通省は直ちにQ400の型式証明を取り消し、代替機による運行を勧告すべきと、エア-ニッポン幹部を震え上がらせるような見幕です。

 それを受けた形のように、1月28日社会面トップには8段で大々的に書き、30日の社説で追っています。

 その要旨は、エア-ニッポンネットワーク1号機(C-GDLK JA841A)の脚油圧配管の接合部に20箇所の隙間が見つかり、ボンバルディア社へ持ち帰り検査したところ、製造段階のミスと判明したので、同社は3月に最終報告を出す予定、そして、それは、世界で800機の運行または運行予定のQ400に影響を与えそうだというものです。

 社説は「大阪便は問題機以外に選択肢がない本県の利用客にとって、真摯(しんし)に応えることが国と全日空の責務である」と結んでいます。

  高知新聞の記事をそのまま信じていいのかどうかはわかりません。

公表データではQ400の故障はそれほどでもない?

 全日空がホームページで公表している運行情報の欠航と引き返しリストにおいてDHC8が他の機種よりも際立っているようには見受けられませんし、また、某航空技術者の方に航空局発行のTCD(重要故障の改修、修理指示) を05年1月〜06年1月の13ヶ月にわたってチェックしてもらったところ、下表のとおりであり、Q400が多いか少ないかは見る人によって違うでしょう。

旅客機機種 TCD件数
DHC8-100〜300 2
DHC8-400 6
B737-200〜900 1 
B767-200〜400: 14
B747-200〜400 37
B777-200〜300 10
DC-9〜MD90 11
DC10〜MD10 30
A320-321 22
A300 32
F-50 6
YS-11 1
AH-66 14
SF340A,B 1
SAAB2000 1
BN-2 1

 因みに、Q400の6件の内容は、電気配線、尾翼取り付け部ボルトの締め付けトルク値、燃料タンクのアンカー・ナットの腐食、主脚アップロック解除の不具合、ピトー管内部の閉塞不具合などの改善指示です。

 高知線で大きく取り上げられている脚の油圧作動に関しては、05/09/07発行のTCDで「主脚アップロックが解除できず、主脚が展開できなくなる不具合防止」というのがありました。
 脚格納のロックと解除はロック用油圧作動筒によって行います。通常は脚柱のある部分と格納室構造との間にフック(鉤)を掛けて固定します。脚出しはまず油圧作動筒でアップロックを外してから脚下げ用油圧作動筒で脚下げをします。しかしアップロックが外れないと脚下げができないようになっています。そこの不具合を改善せよというものです。

2003/07/19 高知空港での試乗会  かつお

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 故障とは

 さて、新聞報道による故障の多くは油圧系統と電気系統のようです。

 Q400の油圧システムは、メインは4システム独立で、おのおの次役割を持っています。

No.1
No.2
エンジン駆動油圧ポンプで操縦動翼、脚上げ下げ、前輪ステアリング、主輪ブレーキ用
(No.1 No.2ともバックアップあり)
No.3 直流モーター駆動のアキュムレーター(蓄圧器)で、非常時(No.1と2が不作動時)用エレベーター・操作パワー
No.4 手動操作の非常脚下げ用

 見るところQ400だけに特有の装置というものはなく、どこの会社でも使っているシステムですが、何か新機軸を取り入れて部品の構造や材質に強度不足でも生じているのでしょうか。

 上記のTCD「主脚アップロックが解除できず、主脚が展開できなくなる不具合防止」に関しては、普通ならすでに指示どおりの改修か、修理作業は完了しているはずですが、まだトラブル発生があるとなると、メーカー指示の作業では不具合解消にはなっていない のかもしれません。

 また、電気については、油圧だけでなく燃料、圧縮空気などもほとんどが電気回路を通じて操作されます。つまり操縦士が機械的レバーを操作しても、結局は電気回路の入切スイッチ操作なのですから、脚の油圧不作動などが電気的トラブルによるものとも想像できます。


 
バスターブ・カーブ

 さて、これからが本番ですが、航空機に故障はつきものだという常識です。某航空技術者の方の解説を引用します。

 一般的に、新機種と新造機は就航後初期故障が多発して、これが「初期故障期」です。

 次に、飛行時間の経過とともに俗にいう「なじんでくる安定期」に入りトラブルが減少します。

 しかし、さらに飛行時間の累積増大に伴い各部に「ガタがくる劣化期」になり、またトラブルは増加傾向になります。

 これをバスターブ・カーブ(西洋風呂桶の構図)と言います。人間の一生と同じです。ヒコーキも安定期が長いほど良いヒコーキと言われるわけです。

 また、機体の大小による違いもあります。大きい機体は 多数の装備品(計器、油圧、電子電装品など)とそれら自体の部品数も多く作りも複雑ですから、小型機よりもトラブルは増えます。しかし大型機はバックアップ・システムが小型機よりは備わっているため 、大事に至らず安全性が高いのです。

 ANAのホームページに載ったトラブルは運航ダイヤに影響したものだけですから、その発生率でいえば0.00数%の小さな数字にすぎません。しかし、運行に影響しない程度のトラブルは多発していると考えた方が自然です。

 現場においては、設計品質、材質品質、製造品質は限度があって、故障したり、劣化したりするのは当然とする認識があります。また、そういう感覚を持っていなければ、事故を防ぐことができないのです。自然法則に逆らって飛ぶヒコーキは、放っておけば落ちるのが当たり前を人間の英知と努力によって支えてやっと飛んでいるの です。

 飛行前に完全無欠なまでに時間をかけて虫眼鏡的にチェックしても、見えないところが痛んでいる可能性を否定できませんし、経済運行という建前での人員や時間の制約もあります。近時、初歩的トラブルが多発するのは、会社の風土とか社員に安全意識が希薄なためとか言われますが、実際には、 飛行機が増えたのと一般に報道される度合いが増えただけのことであって、故障の発生そのものはそんなに変わっていないと思います。

 また、TCDなど改善指示がでても、一度ですべてが改善されるとは限らず何回かの改修が出てやっと不具合が改善されるというものも現実にはあります。各種部品を換えても直らない場合はそのシステムか複合システム全体に問題があって 、全体の整合調整が必要になり機体を止めてじっくり時間を掛けないと直りません。十分な地上試験と飛行試験も必要かもしれません。

 新聞報道によると、高知も松山も佐賀でも、欠航を除いては、手動などのバックアップ機能が働いて無事に着陸し、重大事故には立ち至っておりません。ということは、トラブルが発生しても設計通りにバックアップ安全性機能が保たれていることにもなります。

 ただし、整備陣がバックアアプに安住し、満足しているわけでは決してないことは言うまでもありません。非常操作などすることのない安全運行と定時運行を心の底から願って業務に励んでいると信じています。

 

3 Question about Q400 in Kochi

 そこで、Question about Q400 in Kochiであります。 今のところ、全国紙は取り上げてないようなので、高知のローカルニュースみたいな形になっています。3月にボンバルディア社がQ400の油圧配管の調査結果を発表するそうで、それまでは隙間に金属テープを巻いてしのいでいるそうです。

 「金属テープを巻いて」などとちょっと信じられない記事じゃありませんか。見て来たような嘘をつきという言葉がありますが、20箇所もの隙間があるという欠陥パイプについて、整備現場がそんなところを記者に見せたのでしょうか。

 私は、高知新聞の記者がエア-ニッポンの整備現場をじっくりと取材して話しを聞いているのか、かつ、エア-ニッポンは取材に対して懇切丁寧に応対しているのか、非常に疑問に思います。事は人命にかかわることですから、客商売で言いたいこともいえないなどと引きこもらずに、是々非々で対応してもらいたいものです。

 マスコミも欠航や引き返しに遭遇するたびに腹を立てて、熊さん八っあん的な対応で航空機に対する不安をあおってはいないでしょうか。

 一見専門家かと思わせるような投書を載せるのは自由ですが、記事や社説で追い討ちをかけるのなら、もっと丁寧な取材、例えば全日空よりも先にQ400を導入しているJACの話しも聞いてみる、更にはボンバルディ社へも行ってみるくらいの慎重な対応があってもいいでしょう。

 高知において、大阪まで3時間のJRか、45分のヒコーキ かの住み分け既に確立しているものと思います。だから、この新聞報道くらいで航空便への信頼が著しく揺らぐことはないとしても、なお新聞社も航空会社も冷静に対応してもらいたいものと願います。

 Question about Q400 in Kochi = Quality of  Q400 in Kochi となりますように。

4 後記

 マスコミや航空会社にいろいろと注文をつけている佐伯に、じゃあお前はきちんと取材しているのかと指を刺されそうですね。その批判は甘んじて受けます。
 私は購読料も運賃も何も頂いておりませんので、言うだけのことは言わせていただきます。ただし、無責任な指弾はしていないという自覚をもって。

 

日替わりメモ32番 2006/02/24から

エアワールドのQ400賞賛記事 (本は神戸空港売店に置いてない)

Question about Q400 in Kochi (DHC8-400の故障について)続報

航空歴史館総目次59の冒頭にある高知新聞の見出しを続けます。

2006/02/21 夕 刊   ボンバル機2機引き返す 大阪空港−松山、佐賀便 高知線も2便欠航
2006/02/23 朝 刊   全日空 高知−関空ジェット復活 6月から1往復 ボンバル機対策
                松山、佐賀行きボンバル機異常 ダクト外れなど原因

 ローカルの話題も次第に全国ニュースに格上げされてきています。外気取り入れのダクトが外れて機内空調ができなくなったとか、ドア開閉のセンサーが壊れて表示しなくなったとか、油圧部分以外にも故障多発みたいで、全日空もQ400にはさじをなげつつある感じです。

 伊丹−高知のQ400 14便を12便に減らし、代わりに関空からエアバスA320を飛ばそうというので航空局に申請したというのです。高知新聞の「Q400の型式証明を取り消して、別の機種に替えろ」という男性の主張が一部実現してしまいそうな雲行きです。

 私は、22日16時頃に神戸市三宮からポートライナーで神戸空港を訪れ、到着寸前に新潟便のDHC8が誘導路から滑走路へ向かうのを見ました。Q400なのかQ300なのか電車の中からは確認できませんでした、これも何かのご縁と思い、Q400が巻頭を飾っているというエアワールド4月号を求めるべく、2階の書店へ向かったのであります。

 女性店員曰く「月刊エアラインや航空ファンはまだ入荷していません。申し訳ありません。えっ、エアワールドですか? それは入ってこないと思いますが‥‥」

 エアワールドは19日には発売されているので、どうも取次店がこの本屋さんに卸していないみたいです。なければ仕方がありませんね。広島へ戻って大きい書店で立ち読みしてみました。

 まさに巻頭を飾るにふさわしくDHC8-400がいかに優秀な飛行機でいかに評判がいいか、今後も大量に採用される見通しなどと賛辞の羅列です。ボンバルディア社と代理店が提供した良いものづくめの資料だけで執筆したとしか思えないチョーチン記事には恐れ入りました。高知新聞と全日空の関係者はばかばかしくて苦笑いでしょうな。コトは高知線などの浮沈にかかわっているのですから。 次号でちゃんと釈明があるのでしょうか。なお執筆者はヘリコプター評論家と聞き及びます。

137番 2006/06/16から 

ボンバルディア社がQ400の設計見直しを約束 

 125番で、DHC-Q400の故障(注)続きについて、航空局がカナダのボンバルディア社へ係官を派遣、それには日航、全日空とも同行という記事で朝日新聞が高知新聞を出し抜いたと書きましたが、昨日は高知新聞が東京支社の小笠原敏治記者の署名記事で「ボンバル社 前輪系統設計見直しへ 国交省に伝達」と4段記事で報じました。今度は高知が朝日を抜いた格好ですが、その内容は次のとおりです。
 (注)ここに事故という表現をしていましたが、某専門家のご注意があって故障に変えました。理由は明日の日替わりメモに書く予定です。14:00)

 ボンバルディア社は「特定の条件下で前脚ステアリングが作動しなくなる問題」について部品供給メーカーや運行会社と協議しながら設計変更を行うというもので、既に国土交通省へも連絡し、同省は13日の参議院国土交通委員会で「カナダ航空当局とも連携し、監視していく」と答弁しています。

 日本側の要求により機体の見直しが行われることになったのは、遅きに失したとはいえ一応は歓迎しましょう。ただ、航空歴史館総目次59 Question about Q400 in Kochiで示しているように、Q400の問題は前脚ステアリングだけではありません。各所で油圧の不具合や計器不作動などが起きている問題がどのように処理されたのか、処理されようとしているのか、この記事ではわかりません。

 ここは、メカに詳しい航空雑誌の出番です。トラブルさえなければ人気の高いQ400ですから、正確に事実を追った解説が望まれるところです。

138番 2006/06/17から 

「事故」と「故障」について

 137番ボンバルディア社がQ400の設計見直しを約束の文章中、事故の表現を、注記したとおり専門家のご注意により故障に訂正しました。

 深い考えも無く、事故という表現を使いましたことについて、日々、事故という言葉に神経を尖らせている航空関係者の皆さんに配慮を欠いていたことをお詫びします。

 日本のDHC-Q400について、事故といえる事件は、高知空港でステアリング機能の故障で滑走路を脱輪したものだけであり(航空・鉄道事故調が取り上げている)、未確認ですが、あとは故障であって事故ではありませんでした。 

 そこで、大急ぎで法律を当りました。

 基本的な定義は、航空法第76条に、機長が報告する義務のある事故として次のものが掲げられています。 航空機・鉄道事故調査委員会設置法の事故の定義もこれを準用しています。

  1 航空機の墜落、衝突又は火災
  2 航空機による人の死傷又は物件の損壊
  3 航空機内にある者の死亡又は行方不明
  4 他の航空機との接触
  5 航行中の航空機が損傷(発動機、発動機覆い、発動機補機、プロペラ、翼端、アンテナ、タイヤ、ブレ
   ーキ又はフェアリングのみの損傷を除く)を受けた事態(当該航空機の修理が大修理に該当するも
   ののみ)とする。(5項は施行規則第165条の3)
  

 次に、事故が発生する恐れがあった若しくはあると認められる事態が発生した時の報告義務が第76条の2に規定されています。(例示は施行規則第166条の4)

1 閉鎖中の又は他の航空機が使用中の滑走路からの離陸又はその中止
2  閉鎖中の又は他の航空機が使用中の滑走路への着陸又はその試み
3  オーバーラン、アンダーシュート及び滑走路からの逸脱(航空機が自ら地上走行できなくなつた場合に限る。)
4  非常脱出スライドを使用して非常脱出を行つた事態
5  飛行中において地表面又は水面への衝突又は接触を回避するため航空機乗組員が緊急の操作を行つた事態
6  発動機の破損(破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る。)
7  飛行中における発動機(多発機の場合は、二以上の発動機)の継続的な停止又は出力若しくは推力の損失(動力滑空機の発動機を意図して停止した場合を除く。)
8  航空機に装備された一又は二以上のシステムにおける航空機の航行の安全に障害となる複数の故障
9  航空機内における火炎又は煙の発生及び発動機防火区域内における火炎の発生
10  航空機内の気圧の異常な低下
11  緊急の措置を講ずる必要が生じた燃料の欠乏
12  気流の擾乱その他の異常な気象状態との遭遇、航空機に装備された装置の故障又は対気速度限界、制限荷重倍数限界若しくは運用高度限界を超えた飛行により航空機の操縦に障害が発生した事態
13  航空機乗組員が負傷又は疾病により運航中に正常に業務を行うことができなかつた事態
14  前各号に掲げる事態に準ずる事態

 

 この中で高知線その他で多発したとされるQ400のトラブルに関連するものとしては第8号の「故障」だと解します。エンジンスタートから停止までの間に、航空機の航行の安全に障害となる事態「故障」の発生、具体的には、運行を停止したり、引き返したり、近くの空港に緊急着陸するような事態「故障」です。

 これらは、事故が発生するかもしれない故障であって、事故とは厳密に区分されるべきものでした。

056番 2007/03/14から

DHC8 Q400の前胴着陸
 Q400の欠陥が事もあろうに高知で現実のものとなりました。航空歴史館総目次59で書いて以来、日替わりメモでも繰り返し取り上げてきました。

 結局は、1年前に、Q400の形式証明を取り消して高知線は別の航空機に取り替えろ等の極論を吐いた高知新聞の主張が正しく、それを批判した私の方が手ぬるいということになりました。

 航空局は一体何をしていたのですかね。カナダまで出かけて行ってボンバルディア社に申し入れて、前脚システムの改善を約束させたとか国会で言いながら、実際にはどうであったのか、その経過なり結果なりをきちっと把握してい るのかという点においてです。

 全日空は、午前の記者会見で、さも全日空が悪いことをしたかのようにカメラに向かって頭を下げました。なぜ頭を下げるのか釈然としません。

 整備陣は一生懸命やっているのでしょう。整備手順を間違えたとか何とかの結論が出たのならともかく、トラブル続出のQ400に限っては現場で一生懸命に対策を講じており、特に念入りに点検してきているのではないですか。もし、手に負えない欠陥機をお客に提供していることを詫びたのであれば航空会社の存立に関わる致命傷にもなりかねません。

 マスコミは、ボンバルディア社を表に引っ張り出すべきです。御巣鷹山事故の時のボーイング社修理チームへの突っ込みを怠った無知をいまだにひきずっているのか、外国の会社に対する及び腰が治っていないのか、立場の弱い日本の会社を責めたてるばかりが能ではないでしょう。カメラに向かって頭を下げ るべきはボンバルディア社です。

 同社のホームページを見てみなさい。中国語版はあっても日本語版はないです。ダッシュをこれだけ買ってやっても日本は馬鹿にされているのです。

航空雑誌は時代の流れを知らないのか
 既に書いたように、エアワールドはボンバルディア社の宣伝カタログだけでQ400大礼賛記事を出しましたが、その後のフォローは全くしていません。航空ファンは日本のQ400のトラブルの多さを執筆させましたが、次号でその原因や対策を追ってほしいという当方の要求を無視しました。

 大礼賛のエアワールドや、Q400故障について何も書かない航空情報は評論の対象にもなりませんが、航空ファンだって故障の多さだけ紹介しっぱなしというのでは、ジャーナリストとしてのセンスを著しく欠いているとしか言いようがありません。読者が知りたい情報が何かが分かっていないのですね。

 航空雑誌の使命は一体何でしょうか。よくよく考えて、次号に載るであろう今回事故記事に反省文を入れてもらいたいものです。 

057番 2007/03/15から 

DHC8 Q400の前胴着陸
 今朝の朝日新聞から
 『ボルト部分はカバーで覆われており、整備士が外から点検してもボルトの有無や不具合は分からない。調査委は「ボンバルディア独特の構造で、同社の他機種も点検する必要がある。構造上の不具合ならばカナダ政府を通じて同社に改善を求めることもある」とした。 」』

 今回の事故調は早めに対応しているようです。ボルトの欠落が原因とすれば、まことに単純なものだからでしょう。優秀機とされた飛行機にも意外な欠陥があるものです。既に何度も発生した油圧系統の故障や、計器表示のトラブルなど、この際徹底的に設計を見直してもらいたいものです。

 ボンバルディア社の広報は「日本での調査に協力する用意がある」と言ったと報道されています。翻訳なので正確にはわかりませんが、協力だと? 用意だと? ジョーダンじゃないよという気持ちになりますね。

 航空局は、ボンバルディア社に宣戦布告するくらいの気持ちで当たってほしい。これまでのトラブル処理にどれだけ税金を使っていると思っているのですか。

058番 2007/03/16から

DHC8 Q400の前胴着陸 日替わりメモに対する反響

Aさんから
 今回のボンバルディアの記事は、「よくぞ言ってくださりました」と、胸のすく思いで読ませて頂きました。


Bさんから
 
ボ社のコメントに対して「協力だと? 用意だと? ジョーダンじゃないよ」と書かれていますが、それは逆です。ボ社コメントの主旨は「一切の調査を日本当局に委ね、当社は調査当局の求めに応じて技術資料や検査記録等を開示・提供する用意があります」という意味に受け取るべきです。

 これは、事故を起こした機体メーカとして、当然の協力姿勢です。仮に、そうではなく「日本当局には迷惑を掛けませんので、当社(もしくはカナダの行政機関)が調査します」などと言うなら、それこそ「ジョーダンじゃないよ」で、「調査の主体は日本当局である!ボ社は調査に協力せよ!」と言わねばなりません。
 また、「この際徹底的に設計を見直してもらいたいものです」ともありますが、設計を見直すこともさることながら、製造工程や品質管理面での検証が欠かせません。設計に問題がなくとも、製造不具合があればトラブルを起こします。もし製造過程で問題が起こるとしたら、検査工程の改善や、製造容易な設計への変更など、是正処置を講じることになるでしょう。また、もし設計そのものに問題があったとしたら、設計を改善するのは当然のこと、そのようなことが起きた原因を排除すべく、やはり是正手段を講じることになります。

  マスコミの影響だと思いますが、日本でこの種の事故が起こると、情緒的、短絡的な議論を多く見かけます。しかし、それは週刊誌の売り上げを伸ばすことにはなっても、製品の改善や安全性の向上には結びつきません。宣戦布告などという話ではありません。調査当局と各関係会社による、厳正、冷静な検証と議論が必要です。航空の安全と技術発展のために。

Cさんから
 
ノーズギアなしの胴着では機速をギリギリまで落としてゆっくりソフトに機首を下げ、被害を人的にも機体損傷も最小限したのだと思います。そのため乗客をなるべく後席に移して機体 をテイル・ヘビーにし、エレベーターを一杯上げ舵(操縦桿を手前に一杯引き)にして機首が早く下がらないようにしました。油圧は主翼スポイラーが上がっているので生きていたようですが、主輪ブレーキを使うと滑走距離は短くなっても機首が早く地面に着いて損傷が大きくなるでしょう。なので速度が落ちてゆっくり機首が着いてからブレーキを使用したと思います。
 それにしてもボルト抜け? 最初からの抜け? どちらか不明ですがお粗末の極みで、特に非常時のバックアップが効かないとは現代ヒコーキでは失格、欠陥機ですね。

佐伯から : Bさんから手痛い反論をもらいましたが、連載中の人生録に書くつもりですが、日航の安全啓発センターで御巣鷹山事故の残骸を見て、ボーイング社がだんまりを極め込んで事故調にも積極的に協力していないことに日本人として無性に腹がたったことが、ボンバルディア社への風向きになっていることを認めます。
 しかし、ずっと言い続けてきたように、油圧や操縦系統や計器に多発していたトラブルに航空局が本気で取り組んでいたのかという素朴な疑問、一説では胴体などを下請けしている三菱への遠慮という声もありますが、どう考えても弱腰としか思えないのです。