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航空歴史館技術ノート 掲載09/12/17
追加09/12/23  

  

F-15J主脚格納の時間差について

付録 ダグラスDC-3の主脚と尾輪

 

 2009年12月6日、新田原基地航空祭でF-15Jの脚の出し入れの実演を見ました。主脚カバーが開き、空気取入口の下にねじり込まれ、蓋が閉まるまで1秒か2秒と目にも止まらぬ速さです。左右とも完全に同調しているように見えました。ところが、写真で見ると、左右の動きに差がありました。何故でしょうか?
                                          (門上俊夫)

 

答え MAVERIC

 F-15の主脚左右格納の時間差について、那覇基地の油圧整備の隊員に聞いてきました。 その隊員が言うには、油圧ポンプからの距離(左右脚までの油圧管の長さ)や脚の固定力の差(降ろしている時に固定しているロック部分の機械的な差)により時間差がでるとのことでした。ただ早く上げ下げする時に時間差はほとんどないが、ゆっくり上げ下げするとその症状がでるとのことです。脚の上げ下げ実演だからゆっくり上げたのでその症状がでたのでしょう。離陸の時は高圧ですばやく上げるので時間差はでないが、展示でみなさんにわかりやすいように低圧で上げたので時間差がでるとのことです。


答え2 かつお 

 「脚上げ時間差」 については、零戦チームの産田健一郎さんに尋ねたことがあります。答えは、「複数個所への油圧作動は、抵抗の少ない所から順に効くが、これは避けられない」との ことでした。実際、零式戦闘機の映像では、同時に折り畳んでいるものは皆無といっていいくらいで、個人的にはそれがかっこよく見えました。

・ 付録として、ダグラスがDC-1で旅客機で最初に採用した引込脚(半引込)の構造をDC-3の例で付けておきます。(佐伯)

左右の主脚の時間差の実例

 撮影1965/05/26 東京国際空港 geta-o

付 録

 

2002/04/18発表分を復刻 一部修正

日本のダグラスDC-3研究 技術編

ダグラスDC-3のメカニズム 主脚と尾輪

@ 主脚の引込装置

A ブレーキとステアリング

B 主脚の緩衝装置

C 尾輪


@ 主脚の引込装置

 DC-3のメインギアの引込機構は、図のA(アクチュエーターシリンダー)のピストンがX型の脚ストラットの中央部Cを引っ張り、オレオのDを支点にしてくの字型に折れ曲がり車輪が上がっていく。下げの時は逆にシリンダーがCを押し下げていく。その上下の作動をラバーバンジー又はハイドロリックバンジーが助けている。

 まず、
ラバーバンジーというのは図のBのように太いゴム線を束ねたもので、上げの時は脚柱を引っ張り、下げの時は下げ速度を緩衝していたと考えられる。
 
ラバーバンジーはその名のとおりゴム輪であるから離着陸のたびに伸びたり縮んだりしており、ヘタリ度に応じて交換される。これが左右同時という具合にはいかないので、ヘタリに差が出てきて上げ下げにも時間差が生じ、左右の主脚が別々に作動しているように見えることがあった。

 寿命の短い
ラバーバンジーに替って取り付けられたのが油圧コンペンセンターシーリング(右下図H) である。Eは方向性を維持するだけで上下には関係ない。


 ゴムまたは油圧での脚作動時間は次のとおりである。(全日空定格)     

脚上げ時間
旧式(rubber bungee)     6〜8秒
新式(hydraulic bungee)   5〜6秒

脚下げ時間
旧式(rubber bungee)    最大15秒
新式(hydraulic bungee)   最大20秒

 ただし、ハイドロリックバンジーによっても、左右の油圧が同じように作動するとは限らず、ラバーバンジーの場合と同じように時間差が生じていた。上のR4D-6でそれを見ることができる。


主脚アップダウンの操作

 主脚レバー(landing gear control valve)は副操縦席の後ろの油圧関係コントロールパネルの一番下にある。
 レバーの上げ下げでUP又はDNがそれぞれ完了すると、レバーをニュートラルに戻して油圧をフリーにしておく。油圧かけっぱなしではラインが持たな いからだ。
 
 そのかわりにパイロット席の右にあるラッチレバー(landing gear latch lever)の操作によってギアを固定する。ラッチレバーはワイヤーで油圧ピストンのロッドにつながっており、UPまたはDN時のピストンロッドの位置でロックできる。
 なお地上の停止時には右図「C」のところにセイフティラッチという一種のピンを挿入し脚を完全にロックしておく。
 
 

 ダグラスは近代旅客機の原型ともいうべきDC-1に既に引込脚を採用しており、そのために速度が20%増加したといわれているが、DC-3の主脚機構もいまや古典的中折形式ではあっても、航空機にとって大切な足まわりであり、大型機への成功の大きなステップになっていることは間違いないであろう。

A ブレーキとステアリング

ブレーキ
 DC-3のブレーキは、両操縦席のラダーペダルを足のつま先で踏んで作動させる。踏み込むとブレーキ用の油圧弁によって下記の エクスパンダ―チューブへ作動油が流れ、離すと貯蔵タンクへ戻っていく。
 ブレーキは、脚を引き込めた時も効く。引込状態でも車輪は半分出ているのでブレーキが必要な場合もあるのだろう。

 

ステアリング
 DC-3のタキシング中のステアリングは、スロットルレバーで左右エンジンの回転を変える(つまり牽引力を変える)のと、ラダーペダルをつま先で強く踏むことで左右のブレーキを効かせて機体をカーブさせる。もちろん方向舵も連動してそれを助けている。
 ただしブレーキの乱用でタイヤの損耗をさけるため、できるだけスロットルをうまく使うのが好ましい。

パーキングブレーキ
 機体が停止すると、機長席側のラダーペダルを一杯に踏み込み、パーキングブレーキ コントロール ノブ(注)を引上げると両車輪の油圧がロック状態で停止する。地上ではもちろん車輪止めをセットする。
 パーキングブレーキの開放は、ペダルを踏み込んでノブを押し戻すことで両車輪のロックが解かれる。

DC-3が採用した2種類のブレーキ構造
 世界中で使われたBendix社製のブレーキのうち、FAA specは、DC-3Aにexpandaer tube brakeを DC-3Cにduo-servo brakeを示しているが、前者は効きに時間差があるとされ、全日空ではすべて後者を採用した。

1 expander tube brake

作動油を注入すると布製のエクスパンダー チューブが膨張してシューがドラムに押し付けられ制動する。

2 duo-servo brake

duo-servoが何のことかわからなかったが、duoがデュエットの意味らしいというところから、左図を見るとなるほどである。シューがデュエットで左と右のドラムを押しつけて制動をかける仕組みである。


B 主脚の緩衝装置




作図 にがうり

 主脚の緩衝は上図のようにタイヤ両側のオレオ ストラットで衝撃を吸収する方式である。 
 構造原理はごく一般的なもので、脚柱の外側(シリンダー)が上下に2分され仕切り部に穴(オリフィス)が開いて圧縮空気と油が詰まっており、内側はピストン部でタイヤと連結している。そのピストン・ヘッドのテーパー状のピンがシリンダー仕切り部の穴に入っている。   

 着陸と離陸の両方で緩衝が働く
 着陸では、接地の衝撃で上がるピストンに押されて空気が圧縮され、油が穴から上に流れ込んで脚柱が縮み、衝撃を吸収する。
 離陸では、脚柱が急激に伸びてドスンという機体へのショックを緩衝するために、上方室の油はテーパー状のピンにさえぎられてゆっくりと下方室に戻ってくるわけである。

 DC−3はオレオ・ストロークが短く、衝撃吸収力はそれほど強いものではなかった。それを助けたのがDC−3特有の大直径、低圧タイヤであった。石崎秀夫さんは、「空気圧の低いバルーンタイヤのために軟着陸ができた」という意味のことを書き残しているが、ゴム風船のようなしなやかさが衝撃吸収を助けたということであろう。「機長のボイスレコーダー」p223より


極東航空のJA5025 撮影1956/11 TIA


C 尾輪 

   

 尾輪には、ステアリング機能はない。360°自由回転である。
 尾輪の支柱(スピンドル)の先端のボールAがソケットの中で回転し、フォークとオレオがBを中心に360度自由回転できるように機体にお椀型の切り込みがある。
 停止している時に、稀には尾輪がどっちかに曲がっていて、あたかも尾輪でステアリングしているように見えることもあるが、通常は最後にちょっと直進する余裕を持って停止するのがマナーだそうで、よほど狭い場所ではそういうこともあるという。
 なお離着陸の滑走前には、操縦席からケーブルを通じて進行方向にロックし、自由回転を止めている。