【参考1】 スーパーチャージャーの機構
日本におけるダグラスDC-3 1951年以降の歴史 技術編(休載中)から転記
スーパーチャージャーとは、気化器を出た混合ガスを加圧してシリンダーに送り込む機構一式を指します。
これにより、エンジン出力を高め、特に空気密度の希薄な高高度における飛行を可能にします。第二次大戦の軍用機の活動範囲を飛躍的に向上させた第一の功労者ということができます。
遠心式スーパーチャージャーの加圧に用いられるのがインペラーです。インペラーが1枚(1段)のものと2枚
(2段)のものがあります。
ダグラスDC-3について言えば、米陸軍通常型のC-47Aは1段であり、中国支援にヒマラヤの高空を超えるために改造されたC-47Bは
2段で、より圧力を高めました。
@ スーパーチャージャーのモデル図
以下図面の転載及び変更はすべて許可済み
この図(単列シリンダーの例)は、1段のスーパーチャージャー配置と吸気
(ラムエア)からシリンダーまでの流れを示します。
パイロットは、Manifold Air Pressure Gauge(吸入圧力計)を監視しながらスロットルレバーで絞り弁を操作して出力を調整します。
その場合、Cabulator Air Temp.(吸気温度計)に注意して、
冷気(ラムエア)と暖気(排気で温められたエア)を調節します。
A スーパーチャージャー
インペラーはクランクシャフトから動力を得ますが、離陸時と高空では高速回転、それ以外の通常飛行時には低速回転で事がたりますので、2種類の歯車を切り替えて、インペラーの回転を制御します。これを2速式と呼びます。
R-1830の2速式は、摩擦クラッチで低速歯車または高速歯車のいずれか選択し増速比.は低速7.15:1で、高速で8.47:1となっています。
エンジンの回転数を2、600rpmとすると、、低速でもインペラーの回転数は実に18、590rpmにもなります。したがって インペラーは強度の大きい鍛造アルミニウム合金で作られるのが一般的です。
インペラーで遠心力を得た混合氣は、インペラーを取り囲むディフューザー
ベーン(拡散弁)にあたり、速度エネルギーを圧力エネルギーに替えられ、吸気管へ導かれます。
インペラーと緩衝リング
初期のスーパーチャージャーはクランクシャフト直結でしたが、すぐに増速歯車が開発されました。増速比が大きいエンジンの急激な加速や減速の際に、各部に衛撃を与えますので駆動歯車群の中にバネで衝撃吸収装置を付けました。それが緩衝リングです。 さらにインペラー軸の周りにはオイルシールを設けて、特に低出力時に過給室や歯車室から滑油が吸い込まれないようにしています
【参考2】 関連してDC-3のキャブレ―タ―(気化器)について
日本におけるダグラスDC-3 1951年以降の歴史 技術編(休載中)から転
記
キャブレ―タ―にはフロート(浮き子)式と圧力噴射式のタイプがありますが、R-1830は圧力噴射式(Pressure Injection Type Carburetor)を採用しています。
圧力噴射式のシステムは、ベンチュリー管の負圧によって図のダイアフラム(隔膜)が伸縮し、連動する燃料弁が開いたり閉じたりします。それによってタンクからの流量を調節しミクスチュアーコントロール(混合比調整機)へ送られ、更に操縦席のミクスチュアーコントロールレバーの操作によって濃度が調整されて過給器へ噴射されます。
ミクスチュアーコントロールレバー
高空では空気密度が下がってもベンチュリー管の負圧は空気の密度よりも流速によって得られるために、ダイアフラムは低空の場合と同じ働きをします。つまり同じ量の燃料を送る結果、混合ガスの濃度は高くなって無駄な燃料を消費します。
逆に始動時や最大出力を要求される離陸時などには高濃度の混合ガスを送らなければなりません
これを人為的に行うのがミクスチュアーコントロールレバー(Mixture Control Lever)です。
DC-3では、図のMと記したレバーで次の4段階に切り替えることができます。
idle cut-off 燃料供給をカット
auto lean 巡航中でシリンダーの温度がノーマルの時
auto rich 離陸や上昇の時
full rich 緊急時
日替わりメモ090215から転記
○ スーパーチャージャー(過給機)のインペラー(羽根車)について
最近のレシプロ小型機のエンジンには、過給機がついているのでしょうか。ジェット時代になって航空エンジンにおけるスーパーチャージャーとか過給機とかが死語に近くなってきたような感じがしないでもありません。
また、過給機という単語自体が難しい(馴染めない)航空用語であると佐伯は思っています。航空エンジンが日本に入ってきた当時に誰が過給機と翻訳したのでしょうか。
昭和18年に航空士官学校教授が編纂した航空事典に原語が次のように載っています。
ドイツ語 |
vorverdichter |
佐伯の直訳 前で濃縮する機械 |
ladepumpu |
佐伯の直訳 通風ポンプ |
gabläse |
送風機 |
英語 |
blower |
送風機 |
supercharger |
佐伯の直訳 超送風機 |
仏語 |
commpresseur |
圧縮機 |
どうも、vorverdichter又はsuperchargerを苦心の末に過給機とこじつけたように思うのですが、「給機」はいいとしても「過」が何とかならんもんですかねえ。気化器の次にくるものですから「燃料増速機」や「増給機」なんて如何でしょうか。
お勉強はこのくらいにして、航空歴史館総目次で紹介するインペラー(羽根車)は
空冷星型エンジンの遠心式過給機の部品です。第二次大戦から戦後相当期間まで活躍したエンジンから取り外されたものでしょう。羽根の数が19枚と少ないので、2段式過給機の1段目の羽根車かもしれません。単体を現物で見るのは珍しいです。
そういうことで、
参考としてR-1830エンジンのスーパーチャージャーとキャブレ―タ―の解説を付けておきました。インターネット航空雑誌ヒコーキ雲開始前に手掛けていた日本のダグラスDC-3技術編の中から復活させ
ました。8年前に、専門家に教えて貰いながら発表したもので汗顔の至りですが、R-1830エンジンは、
エンジン史において古典としての価値をもっており、時に振り返ってみるのも必要なことと思っている次第です。
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