新 ちょっと昔の国産ドローン
「川崎航空機製 KMQ-5」について
吉永 秀典
1962年1月ごろ築城基地において飛行実験隊によりT-33Aの左翼下パイロンに懸架されて試験を行うKMQ-5の1号機を見かけた。細身の円筒形の胴体の上部に小さな直線翼と背の高い尾翼のスマートな機体は全身黄色で中胴部のみ蛍光オレンジ色で眩しかった。
撮影1962/01 築城基地 81-5353 吉永秀典
地上電源車(APU)により電源を入れて地上試験を受けるKMQ-5の 1号機
胴体先端にピトー管が付き主翼端のふくらみ部の外側の回転軸に小さな動翼がありそこに作動機構が内蔵されているようだ。この動翼の付け根後方には作動角度の表示が書いてある。
水平尾翼は全浮動式「スタビレーター」の付け根にも回転軸があり動翼の後方に作動角度の表示が見える。背の高い垂直尾翼には方向舵は無い。胴体前方上面にNACA型のような冷却用空気取り入れ口があり胴下中央には小さなノズルがあるので推進装置のように見える。
また前胴下面には電気コードとコネクターがありその直後にL字型のアンテナを装備。
主翼中央の上に出たボール状の金具をカバの口で噛むように挟む金具(SHACKLE)がパイロンの下面に見えており、この1点で本機を吊るし前後4本のローラー付きアームで固定するようだ。このアームは上方に収める機構があると思われる。
なお「スタビレーター」取り付け基台のプレート部分をガムテープらしきもので仮止めしてあり角度などを調整中と思われるので、この時点での投下試験はまだ行われていないように見える。そのテープに隠れた記号が「KQ?-101」と読めるのは試作101号機と読めるのだろうか。本当のことは分からない。
飛行の準備を進める飛実パイロットと支援の整備員とドローン1号機
1枚目写真とこの斜め後方からの写真で知りたい部分が殆ど理解できると思われるが、その垂直尾翼で隠れる母機T-33Aのウイング・フラップの外方上面に「目盛り」が書いてあるのはこのテストに必要な表示であろうか。
その他の訓練機に記入はない。
ドローンを投下しないで帰投しランプ・インする飛実のT-33A 81-5353号機
後方のT-33A列線の部隊マークは蛍光フィルムだけの「第16飛行教育団」を表すもの。
前に続く帰投のショットでパイロンとの関係がよく分かるもの。なお
「帰投した」という根拠は母機のダイブ・フラップが「ダウン」しているからである。
とっておきは前席計器盤のドローン・コントロール・ボックスで、電源供給中であり各種計器は正常に作動中のもの。これで分かるのは投下までの作動状況は管理できるがドローン投下後は「自動プログラムによる飛行に任せる」しかないように見て取れるもの。
見る限り「手動で操縦をリードする装置」などは見当たらない。
その後の調べで判明したのは、川崎航空機製KMQ-5「TARGET DRONE」である。
本機の主な諸元は、全長約3.6mのターゲット用ドローン試験機で、推進用に緩燃焼ロケットを使用し速度はMAC:0.8程度で約8分の飛行を目指す計画であったが、性能不足などにより中止されたようである。断片的な情報では12号機までは記録がみられるが、それらの全てが飛行したのかどうかは不明である。
なお本稿に使用した写真を基に1号機のイラスト図を描いてみたが、他の写真から細部を知ることは困難なために再現できなかった。
ただし以前御HPのT-33Aの機番号一覧では12号機の蛍光色塗装がなく、赤矢印で示す電気コードの取りつく位置は後方に移され、前後の動翼部分には大きな保護カバーが付けられているので改良されたかどうかは不明である。 後部胴体側面の記号表記もない。
その他パネルの形状変化やビスの配列なども殆ど確認できない。
川崎航空機製KMQ-5 1号機の大まかなイラストであるが、12号機は未完成の為もしも資料をお持ちの方がおられたら書き込んで完成して頂きたいものです。
補足
KMQ-5が搭載されている写真を紹介します。(編)
編集掲載日 : 2023年02月25日
WEB編集 : イガテック
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