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航空歴史館 技術ノート

掲載13/06/29
追加16/10/13


尾輪式航空機の胴体の担ぎ上げ棒穴

1 ノースアメリカンT-6G 後部胴体の孔 FUSELAGE LIFT TUBE

2 四式戦疾風の場合 扛上棒孔

3 三式戦飛燕の場合 擔い棒挿入孔

4 擔ヒ棒孔の蓋の実物

 屠龍の孔の実物 孔(チューブ)の取付の実際

 九八式直協偵察機の尾部擔孔と尾部擔棒

7 紫電の尾部カツギ棒孔 

8 零戦の場合 ジャッキアップ  

9 胴体持ち上げ用の孔がある機体 無い機体

10 ビーチクラフト モデル18系の場合
 11 ピラタス ターボポーターの場合

12 グライダーの場合

参考 他の孔の実物

1 テーマの発端

 ノースアメリカンT-6G 後部胴体の孔は?

 テキサンの胴体に貫通する孔、これは一体何のために開けられているのでしょうか。写真は所沢航空発祥記念館52-0099の例 

        

 

山内秀樹さんから回答

 お尋ねの「孔」ですが、T-6Gの米軍マニュアル(下記)によりますと、孔そのものは
<FUSELAGE LIFT TUBE (
胴体持ち上げ用チューブ)
 
 その中に通すパイプを
<LIFT-MOORE TUBE (
持ち上げ・繋留用チューブ)
 
と表記されております。

 この孔にパーツ番号<E-20 LIFT-MOORE TUBE>を通し、その両端(すなわち胴体尾部左右側面)に吊り上げ用のワイアーを取り付け、尾部を吊り上げます。そのままワイアーを通して吊り上げるのではありません。

 このE-20が無い場合、代わりに直径1インチの鉄棒を通して、それに金具を取り付けて吊り上げても構いません。

 左右内翼上面の所定のねじ穴にパーツ番号<E-700 HOISTING RING(吊り上げ用輪環)にフックでつないだワイアーと上記の2本のワイアー、つまり合計4本のワイアーをパーツ番号<E-25>というスリング金具を介して完成機全体をクレーンで吊りあげることができます。

 また、地上に繋留する際には、この孔にワイアを通しその先端を地面に打ち込んだアンカーに結んで止めます。アンカーの位置はこの穴の直下から左右に3ft、後方に3ftの地点がマニュアルに図示されています。

 AN-01FFA-2/10MAR50/24MAY56, HANDBOOK MAINTENANCE INSTRUCTIONS USAF SERIES T-6G & LT-6G

 AN-01FFA-4/02MAY50/29JUN62, TECHNICAL MANUAL ILLUSTRATED PARTS BREAKDOWN USAF SERIES T-6G & LT-6G

 

佐伯から

 ありがとうございました。孔に、まずパイプを差し込んでからワイアーを通して吊り上げたり、地面に固定したりするのですね。写真は小月航空基地A6501-1で修理中のSNJ。

 

2 疾風の場合  にがうりさん かつおさんから

 2005年学研社刊「歴史群像 太平洋戦史シリーズ四式戦闘機 疾風」の図面に<扛上棒孔蓋(両側)>とあります。<扛>は、漢和辞典によればコウと読み、横棒を両方から持ち上げる意とあります。そのものずばりです。<蓋>は、多分、両端に蓋を付けていたのでしょう。

 また機体の上図(模写)では、通した鉄棒に重しをぶら下げています。

 

3 三式戦闘機取扱法(昭和18年4月)  にゃンきち

 

4 擔ヒ棒孔の蓋の実物  中村泰三

直径12.5cm 機種は不明

 

5 屠龍の孔の実物  中村泰三    5

   

    孔(チューブ)の取り付けの実際
    

   

日替わりメモ2013/06/29

・ 屠龍の孔(チューブ)の取付の実際     パイプ(チューブ)の両端に鉄板を溶接して、それを30数本のリベットで外板に止めているみたいですが、中村さん、間違っていたら訂正してください。ともかく、日本機の内部から担ぎ棒の孔の状態を知る写真は本邦初公開でしょう。ありがとうございました。

6 九八式直協偵察機の尾部 擔孔と尾部擔棒   6

昭和15年8月陸軍航空本部 九八式直協機説明書(アジア歴史センター公開資料)

尾部擔孔


尾部擔棒

日替わりメモ2013/06/29

・ 九八式直協偵察機の尾部擔孔と尾部擔棒     横川さんからアジ歴の資料を紹介されました。九八式直協の取扱説明書の中に明瞭な図で出ています。尾部の14番框(フレーム)の所に尾部擔孔があり.、尾部擔棒を.差し込むのです。ただ、お尻を持ち上げるのがどういう場面なのかを探したのですが、300ページにわたる複写の中の小さな文字を読むのは容易ではなく、見付けたのは尾輪に注油するときに尾部を担ぎ上げよという項目だけでした。
(C01004936500)98式直協機説明書送付の件(jpeg)

・ 25日に挙げた名称に立川を追加します。(ただし、雑誌の図面作者の命名を含みます)
     中島 疾風       扛上棒孔
     三菱 百式司偵    担棒孔
     三菱 九九式双軽   尾部担棒孔
     川崎 飛燕       擔ヒ棒挿入孔
     愛知 紫電       尾部カツギ棒孔
     不明           擔ヒ棒孔
     立川 九八式直協   尾部擔孔
     立川 九九式軍偵   担棒孔

 不必要に外来語を使うので精神的苦痛を受けたとNHKを訴えた日本人がおりますが、テキサンのfuselage lift tubeという表記とこの各社まちまちの表現を比べたら、時代は違いますがNHKも無理ないなと思ってしまいます。

 さて、いにしえの航空技術者たちが頭をひねりひねり考え出した造語、それが、教養というものだと言われれば、先ずは漢和辞典の厄介になりましょう。

 音で「コウ」、訓で「あげる」と読む。横棒を両方から持ち上げる意味

擔 音で「タン」、訓で「かつぐ、になう」と読む。

担 音で「タン」、訓で「かつぐ、になう」と読む。擔の略字として用いるようになった。

7 紫電の尾部カツギ棒孔 にゃんきち

8 零式艦上戦闘機の場合

佐伯から零戦談話室へ質問

 陸軍機で扛上棒孔(疾風)、担棒孔(百式司偵)など尾部持ち上げ用の鉄棒を差し込む孔がありますが、零戦各型にはそような孔が無いように思えます。

 もし、無いのだとすると整備取説には、尾部持ち上げはどのように書いてあったのでしょうか。

 

零戦談話室上でのにゃンきちさんから回答 (にゃんきちさんと零戦談話室管理者に感謝します。佐伯邦昭)

・ 零式艦上戦闘機の機体取扱法

  胴体支持については、主翼前桁及び胴体後部支持位置を支持するを要す。
 
 主翼前桁支持は左右前桁下面に装備している滑り止めの穴に専用「ジャッキ」付架台を付けて行う。
 
 後方支持は胴体後部の支持位置において専用尾部架台に載せて行う。
 
 本機を架台に載せた時には機の安全を期するため、尾部に140KGの重錘(おもり)を付けること。
 
 胴体の前後左右の水平を検査するには胴体内の第6隔壁及び第6.5隔壁の蓄電器格納箱左舷に前後水平受台、第5隔壁に左右水平受台がある。
 
 尾部点検のための尾部のみ簡単なる支持は第16隔壁後部のジャッキ受けに
「ジャッキ」を付けて挙揚する。

※ 零戦(海軍機)には「かつぎ棒挿入口」は無かったようで、基本的にはジャッキポイントにジャッキを当てる方式でした。 ジャッキポイントは、取扱説明書より「ジャッキ
受ゴム座」なるもので、 支持強化されたポイントをゴム受けで緩衝していたようです。

 

9 胴体持ち上げ用の孔がある機体 無い機体 大石治生

 大戦機の胴体の持ち上げ 孔について手持ちの資料で簡単にではありますが調べてみました。

旧日本海軍機:
  九六艦戦 なし
  零戦 なし
  雷電 有 (1941年夏に基礎設計図完成)
  紫電 有
  紫電改 有
  秋水 有
  烈風 有

旧日本陸軍機:
  九七戦 なし
  一式戦 なし
  二式単戦 なし
  二式複戦 有(キ-45改甲は有、試作機なし?)
  三式戦 有
  四式戦 有
  五式戦 有

 どうやら1941年6月にBf109-E3が3機輸入され、各務原にてテスト飛行が行われた頃から日本では担ぎ棒用の孔が採用されたみたいです。

 意外と目立たない工夫ですが、コロンブスの卵的な発想として、戦闘機の搭載機銃の試射や調整する際に重宝したのでしょうが、設計時にこの発想が無かったと思われる零戦や一式戦、二式単戦では、結局最後まで改修されることなく採用されなかったのが不思議です。

 因みにドイツ機の場合は初期の段階から採用されております。
  FW-190A-0 有
  Bf109 B-1 有

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10 ビーチクラフト モデル18系の場合 FUSELAGE LIFT TUBE    JRB-4

JRB-4

撮影2014/10/18 下総航空基地 大石治生 

C18S

(1944/06製造 米軍C-45) 撮影1964/03/14 東京国際空港 geta-o

H18 ボルパーキットで前輪式に改造された機体

撮影2011/07/16 苫小牧市第二はくちょう幼稚園 take chan

 もともと付いている蓋なのか、ボルパー改造キットで塞がれたのかは不明です。

11 ピラタス ターボポーターの場合   11

PC-6 JA61TC 阿蘇観光牧場場外離着陸場 撮影2016/10/10 まるヨ@

     

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参考 他の孔の実物 中村泰三

直径10cm


直径6.5cm