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6 技術論

 
 1 前輪収納部のバラストと銃口
  エアダクトについて
  T-1A/Bのエンジンノズルの見分け
  エリアルールは採用していない

らぶこすた〜 ダッシュ1 ショットB 横河裕一 井上進 小山澄人さんほかの情報を整理 佐伯邦昭 

 

 

1 前輪収納部のバラストと銃口

 

 前輪収納部の109.3LBSという 文字はバラストの重量を示します。

 ここは、本来12.7ミリ機銃の銃座です。機銃を置かない代わりに機体調節のバラストが置かれ、それは古新聞の束であったり、いろいろなものを使っています。

 定期修理の度に、機体は腐食や傷を研磨されたり、塗装前にパテ埋めをされて重量が変わるのでバラストで調整を取りますが、T-1では固定機銃の場所を拝借しているという訳です。

島田市初倉展示機 T-1A 25-5840 機銃座のバラスト 109.3ポンド

金沢展示機 T-1B 25-5857 機銃座のバラスト 72ポンド 

防府北基地展示機 T-1A 15-5818 機銃座にバラストなし

島根県川本町展示機 T-1A 25-5846 機銃座のバラスト 131.9ポンド 

奈良県王寺工業高校展示機 T-1B 35-5863 182.6ポンド

銃口について

 世傑最終ページのインテリア・アレンジメント図には、機首の左舷側に12.7ミリ機銃(スペースのみと説明)が描いてありますが、右舷の間違いですね。2号機#802では、機銃のテストをしたとも聞いており、YS45さんが入間の稲荷山公園で展示中に撮った写真には銃口が写っています。

 

T-1A 85-5802 銃口(2号機のみ) YS45 2号機以外のT-1A/B

 恐らく、これが唯一の例であり、他機はすべてふさいであるものと思いますし、したがって13飛行教育団でも機銃の訓練は無かったものと思います。  

 一朝事あれば、練習機といえども弾を積んで出撃ということがあるかもしれないのが非常時の軍隊ですから、その意味では平穏な生涯を終え た飛行機でした。

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 エアダクトについて

 

島田市初倉にあったT-1A 25-5840の前輪収納部

 座席の両側を分流するエアダクトは、コクピットの気密側壁にもなっている ようです。この写真のようにT-1の前輪収納部 は異様に広い空間で、ノーズに口をあけているインテイクは何処に行ったのかと暫し考えてしまうほどです。

 しかし、よく見ると、左右に楕円形の筒が走っている事が確認できますが、ここがハチロクとの思想の差を感じさせる部分となっているかと思います。 2

 

エアダクトの合流位置

金沢市にあるT-1B 25-5857の胴体切断部分


 

エアダクトの後端 エンジンの接合部

かかみがはら航空宇宙科学博物館の倉庫にあるT-1B 25-5801の胴体切断部分



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Nozle
3 T-1A/Bのエンジンノズルの見分けについて

 


 エンジンと排気ノズルの公開 T-1A 25-5836 芦屋航空祭

 こんな長い排気管では効率が悪いのに、重心位置などから仕方がなかったのだろうかと思われます。

 T-1AオーフュースエンジンととT-1BJ3エンジンの排気口の形状の違い

A型オーフュースエンジン
 Aはエンジンの後方にジェットパイプ(小径)を取り付けてから、シュラウドパイプ(大径)を後方からかぶせるように取り付けます。ですから、機体後方からエンジンを覗くと輪が二つ確認出来ます。

T-1A 世傑p59 転載許可済み

T-1A 浜松広報館   

B型J3エンジン
 Bはエンジンの後方にジェットパイプを取り付けてから、パイプに固めのアルミ箔のような物で作られたブランケットと呼ばれるカバーを針金で縛りながら取り付けていきます。ですから機体後方からエンジンを覗くと輪が一つだけ見えるのです。
    
  T-1B 

 なお、かかみがはら航空宇宙科学博物館倉庫に保管されている初号機#801の胴体には、2種類のエンジンマウントの改修後が残っているそうです。図書室2 文献紹介 横山晋太郎 富士T-1初号機の保存復元について参照

 その技術を保存しておくためにも、#801の早期復元が望まれます。  

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4 エリアルールは採用していない

 

 T-1の平面図をみると、後部座席の後ろの胴体がエリアルール(くびれ)になっているが、実機を目視しても写真を何枚並べてみても分からないという疑問が寄せられました。

 T-1は遷音速区域の練習機(防衛省の提案要求は制限マッハ0.85)として、当時の日本としては野心的な後退翼を採用しました。テスト段階ではマッハ0.835で猛烈な振動が起こったと記録されています。

 かかみがはら航空宇宙科学博物館に展示保存されている2機のT-1を実際に当たって頂きました。

 

 以下、ボランティアの小山澄人さんによる危険な個所からの撮影を含めての調査結果です。

 結論から言うと、T-1の胴体にくびれはありません。

 T-1の平面図で胴体がくびれているように描かれているのは、T-1の胴体断面がオムスビ型(おたふく型と言ったほうがよい?)なので、翼型の関係(中央部が盛り上がっている)で翼胴接合部がくびれているように描けてしまうためでしょうね。

T-1B 05-5810


長さ2mの鋼尺を胴体の主翼接合部の上方に当ててみましたが、この通りです







T-1B (T-1A→T-1B) 85-5801 







参考 井上進さんによる三次元グラフィックによる検証




日替わりメモ 2012/01/16

〇 エリアルール

 富士T-1の胴体のくびれについては解決しましたが、佐伯の記述をひやひやしながら見ている専門家の方からエリアルールの説明はひどすぎると厳しい指摘を頂戴しました。

 その方のメールの末尾に『せっかく保存機に関して高評価を得ている「ヒコーキ雲」なのですから、こういう誤解でミソをつけてしまうのは残念です』とあり、痛く恐縮しています。

 エリアルールの理論は、遷音速域と超音速域では変わってくるし、T-1で私が論じた胴体と主翼だけでなく、尾翼や発動機位置などをすべて含めた機体全体の形状で論じるべきであり、高等数学を用いての詳しい解説がたくさんあります。再び誤解を恐れずに言うならT-1にエリアルールの理論がないというのは誤りで、意識、無意識に拘らず速度向上のためにその理論が応用されているとでも言っておきましょう。よって、T-1だけで乏しい知識を披露してしまったことをお詫びし、の余計な文句を削除しました。

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