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質問箱010 掲載14/02/04
航空歴史館 技術ノート


海上自衛隊に供与されたJRB-4の名称について

 

質問 2014/01/30

 海上自衛隊に供与されたビーチクラフトJRB-4の名称が、資料によって下記三つの表示に分れています。海自における正式名称をご教示ください。

SNB-4

下郷資料、JAPANESE MILITARY AIRCRAFT SERIALS、鹿屋航空基地史料館

SNB-5

文林堂イラストレイテッド108 自衛隊航空機ALL CATALOG
(「海自名称はSNB-5」と明記している)

SNB

下総航空基地、日本航空機全集、防衛庁外郭団体刊行物など

鹿屋航空基地史料館と下総航空基地の説明板については間違った航空史の垂れ流し参照    

回答 山内秀樹  2014/01/31

 「俗説」が「通説」として通ってしまうのが曲者なのです。

 JRBはビーチクラフト製雑用輸送機、SNBはビーチクラフト製偵察練習機というのが本来の定義ですが、海上自衛隊で使用された機体は全機JRB-4です。

 米海軍のJRB-4は当初からJRB-4として完成した機体が多いのですが、SNB-2/-2C,、JRB-2/-3として完成し、JRB-4に改造されたものも数多くあります。

 米海軍から海上自衛隊に供与された35機のうち33機は当初からJRB-4として完成したものですが、JMSDF6406(Bu.No.29616)JMSDF6410(Bu.No.29611)SNB-2Cとして完成した機体です。

 殊にJMSDF6410、SNB-2Cとして米海軍に引き渡された後、患者輸送機SNB-2Hとなり、その後JRB-4Hと改称、そして通常のJRB-4に再改造されています。

 しかし、海上自衛隊でJRB-4に課せられた任務は「SNB」としての多発機(双発機)操縦訓練ならびに計器飛行訓練でした。

 従って、内部では通称「SNB」で通っていたのは事実です。

 なお、JMSDF6420 (Bu.No.44683)は、SNB-2P/-3P/-5Pと同様、胴体下面にカメラ窓があり、垂直写真撮影に用いられましたが、JRB-4P等の呼称は与えられず、機体にもJRB-4と記載されていました。


 米海軍・海兵隊で使用したJRB/SNB/C-45系列の戦後の変遷をまとめると次の通りです。

 1940年代末期から1950年代初期にかけて、当時すでに存在した各種派生型を含め、残存していた多くのJRB/SNBREBUILT(再生)されました。その結果発生したのが、JRB-6, JRB-4(SNB), JRB-4(SNB), JRB-4(SNB)P4機種です。

 これら4機種は一切海上自衛隊に供与された機体はありません。従って、海上自衛隊機にはJRB-4(SNB)JRB-4(SNB)も、ともに1機も存在しません。

 1962918日の米軍機呼称統一によって、これら再生機のうちその時点で残存していたJRB-4(SNB)JRB-4(SNB)PがそれぞれTC-45JRC-45Jに改称されました。つまり、それ以前にJRB-6、 JRB-4(SNB)を含む再生機と再生の対象にならなかったJRB/SNB系列の機体は米海軍から除籍されていました。

 なお、TC-45Jは、その型式名が示す通り「練習機」で、VT AP(プロペラ推進高等練習機)に分類されていましたが、訓練部隊に配属されていた機体を除いて他は「軽輸送機」として使用されていました。しかし、196411月、訓練部隊によるTC-45Jの使用頻度が減少したため、VU MP(多発雑用機)に再分類され、その時点で385機残存していたTC-45JはすべてUC-45Jに呼称変更されました。

(因みに19641031日時点での米海軍TC-45Jの訓練部隊使用機はVT-615機のみ、他の370機は軽輸送機として使用されていました。)

  これから先は、米海軍機の解説になってしまい、本論からズレますので、ここまでにします。
 JRB/SNB/C-45には親しみは深くても、深く研究する人が少なくて、過去にも多くの執筆者がいい加減な調査でいい加減な記事を書き、それが孫引きされているのが残念です。


佐伯から : インターネット航空雑誌ヒコーキ雲においても、理由が分らないままSNB-5を使ってきましたが、以後、JRB-4に統一します。

       


[付] 自衛隊航空機ALL CATALOG 文林堂イラストレイテッド108 

   121ページのタイトル
   

 解説の中に「海自名称はSNB-5」と書いて ありますが、その理由に触れていないので、ヒコーキ雲から航空ファン編集部に質問を送りました。

(ア) 質問

 ヒコーキ雲ではイラストレイテッド108を尊重して-5で統一していますので、-5説の根拠を教えて貰うとありがたいです。

(イ) 航空ファンからのお答え (2014/02/03受信)

 お尋ねのイラストレイテッドNo.108内のSNBの型式についてですが、明記の通り機体解説を担当された松崎豊一氏、機体番号を担当された 佐藤正孝氏の調査・考証によるものという以外、編集部としてはお答えのしようがありません。宜しくお願いいたします。