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図書室95

掲載19/12/24

 

30th 航空科学博物館30周年記念誌

 

紹介 佐伯邦昭

 

 

 

発行 公益財団法人航空科学博物館

A4版 126ページ

非売品

 


  千葉県芝山町の航空科学博物館は、ご存知新東京国際空港(現成田国際空港)の建設における様々な経緯と、故木村秀政博士らの希望の中で空港隣接地に誕生しました。それから30年、本年度大きなリニューアル工事が行割れるとともに、30周年記念誌 が発行されました。


佐伯と航空科学博物館の関わり

 私と航空科学博物館は、2004年2月21日、フェアリンクのボンバルディアCL-600(JA01RJ)の広島〜成田便で訪れたのが最初 の関わりでした、
 新東京国際空港には思いがけずShadowさんとYS45さんが出迎えてくれていて、まず航空科学博物館へ案内してくれました。館外と館内の写真を一通り取り終えたところで、Shadowさんがこういうところも見て行ったらどうですかと、本館の或るドアを開けてくれたのです。

 そこには、20人ほどの子供らがいて、様々な機体や器具を使って航空の原理などの説明を受けております。これが、航空科学博物館名物のオープンハウスでした。毎週土曜日にボランティアスタッフによる”見て・聞いて・触って・動かして”のやさしい航空講座が開かれていたのでした。無断ちん入 にも拘わらず、私どもに何のお咎めもなく、撮影も質問も皆さん快く接してくれて、いっぺんにここが好きになったのでした。

 感激した私は、その年の6月と翌年4月にも主としてオープンハウス目的で訪れて、より身近にボランティアの皆さんと交流し、ボーイング747稼働模型の操縦体験、富里のスクラップ置き場にあったYS-11見学、NAMCO工場の視察などまで便宜を図って頂き、東京までの京成ライナーでは、にばさんと缶ビール片手に航空談義と実に有意義な博物館訪問となったのでした。

 その上、インターネット航空雑誌ヒコーキ雲のために様々な情報を送ってくださっていることもご承知のとおりです。

 30周年記念誌のVoiceページ中から、ボランティアスタッフを代表してお二人の所感を転記しておきます。
   
   ・ 金澤 理勝 ボランティア暦:8年4か月
   

   ・ 仁林 敬 ボランティア暦:16年4か月
   


 また、つい最近も飛行船展示の写真を送ってもらうなどボランティアの皆さんと同じようにお世話になっている展示部長種山雅夫さんの所感もご覧ください。開館当初から勤務してきた生き字引でとして館が目指してきたところを端的に語っています。
   


30周年記念誌の内容について少々

・ 外へ向けての資料というよりも、開館以来の歴史を書籍の形でまとめておきたいという内部資料的な色彩が濃いので、詳しく批評するのは避けますが、第三者として気付いた点を少々

・ 航空科学博物館の航空機のリスト

 このような形で開館以来のすべての航空機が4ページにわたってリストアップされています。すべてに前所有者名が記載されているのが史料価値を高めていると思います。

 リストはインターネット航空雑誌ヒコーキ雲が掲げているものとほぼ一致しますが、過去の機体で初見のものもあります。

 岩手県北見市で確認されているモングスポーツ複葉機(上野建久氏がリノエアレースで優勝)や、グライダー、人力機などです。

 

・ この項目で非常に残念なのは、エンジンに全く触れていないことです。
  ヒコーキといえばまずは発動機付きの機体を思い浮かべるのが常であり、航空発達の歴史は、同時にレシプロとジェットエンジンの発達史でもあるわけで、航空科学博物館もたくさんの貴重なエンジンを保有展示していますよね。
 プロペラや脚など部品類までは無理でしょうが、発動機だけは項目を建てて記載してほしかったです。
 成田国際空港と同じく運輸省航空局〜国土交通省航空局の官僚の流れを汲む団体ですから、理事だの何だの紹介に多くのページを割いたのも分かりますが、それだけに発動機のカットはアウトでした。


・ そして、30周年記念誌には全く責任がないことではありますが、自衛隊を含めて軍用機がオールナッシングであること。
 左翼と激戦を繰り広げた成田闘争のトラウマで、航空科学博物館は軍用機を完全に避けております。
 民間空港に接して空港と共存共栄を図っていくのが館の方針だからという言い訳は成り立つでしょう。でも、航空博物館という定義の中で、軍用機がないのは、まさに片肺飛行だと言っておきましょう。
 外国人が Museum of Aeronautical Science の名に惹かれて来館してみて、ここは民間航空専用博物館だったかと驚くのでは! 周っているうちに内容に満足して、そんなことはすぐに忘れるでしょうけれど。


・ そういう片肺飛行の泣き所はあっても、狭い空間にあれもこれもと詰めている博物館に比べれば、むしろそれが日本国内で唯一民間航空部門を柱とする航空博物館の長所でもあるでしょう。
  しかし、私は、それでも、いつの日にか、左翼の愚劣な思想に遠慮することなく、隣接地に軍用機の歴史科学別館を建設して、子供たちに公平な航空思想を植え付けてくれるように祈っています。