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ヒコーキマニア人生録・図書室 掲載10/01/12

『飛行機というものは、かくも冷遇される存在か』論を覆す

各務原方式の紹介

 

 文 小山澄人かかみがはら航空宇宙科学博物館支援ボランティア ) 

 

 

 1月10日付日替わりメモの 『続々 飛行機というものは、かくも冷遇される存在か』の話題 について、私の経験を交えてかかみがはら航空宇宙科学博物館の現状をお知らせします。

 各務原では博物館が支援ボランティアという組織を持ち、ボランティアの皆さんが屋外展示機の清掃維持をしていますが、これは博物館からの指示や依頼で行っているのではなく、その殆どがボランティアの方々からの提案と自発的な行動で行われています。

 もちろん、作業をするにあたっては展示機の管理者である博物館と相談し、許可をもらってから実施しています。


・ かっての屋外展示機の惨状

 各務原の博物館でも、一時期、屋外展示機は汚れがコケのようにこびり付き、塗装は劣化しひび割れて「悲惨」の一言に尽きる状態になりました。

 周囲から「航空博物館の展示機は耐候試験をやっているんだろ?」とからかわれたり、来館者から苦言を言われたり辛い思いをしていました 。私から博物館の職員や各務原市役所に再塗装を訴えたこともありました。ボンランティア活動紹介ホームページ に愚痴を書いたこともありました。

 でも中々予算はつかないし、状況は悪くなるばかり でした。

 「何とかしてくれ」という声はあがります。 それでも、具体的に行動を起す人は誰一人としていませんでした。当時は「博物館展示機の清掃作業の如き肉体労働はボランティア活動の範囲を超える」という考えがボランティア・グループの上層部にあり ました。

 また、過去にボランティアが善意のつもりで行った清掃作業が、展示機の歴史的価値のある「汚れ」をキレイサッパリ消し去ってしまった(という不幸なことがあったと聞いていたため、私自身、なかなか実行する気分にならなかったのです。
 これは産業文化遺産を素人のボランティアが扱う上で一番に注意すべき点です。

 

・ 若手が奮起  鉄道マニアから刺激を受ける

 そうこうしているうちに、航空専門学校生など10代、20代の若いボランティアが「もう飛行機が可哀相で見ていられないから我々で清掃したい。博物館に言っても埒が明かない。小山さん、僕らでやりましょうよ」と言い出し ました。

 幸か不幸か、私が若手ボランティアの取りまとめのようなことをしていました。矢面に立たざるを得ない状況です。

 そんなある日のこと。偶々、私の仕事の上司が熱烈な鉄道マニアでした。彼は休暇となると泊りがけで蒸気機関車を磨きに行くという程の”鉄ちゃん”で、私が博物館でボランティアをやっていると知るや次のようなことを私に言 いました。

 「俺達は(SLの維持活動を)普通にやってるけど、なんでお前等(飛行機好き)はやらないんだ? やりゃあいいじゃないか」

 何気ないこの一言が私には突き刺さりました。そうか、そうだよな。やってみりゃあいい。


・ 案ずるより産むがやすし

 再塗装なんて大掛かりなことでなく、水洗いだけもそれなりに綺麗になるかも。そもそも劣化が避けられない屋外展示機にはオリジナルの維持は望めない。

 ボランティアの皆さんには作業時の安全の確保と展示機にダメージを与えないように注意を徹底をすればよい。そんなに難しいことをしようとしているわけでもない。

 清掃用具も100円ショップで揃えれば安上がりで済みます。

 大型の展示機の垂直尾翼や天井部分などの高所作業は、安全面から流石にボランティアのレベルではできませんが、そこは知恵をしぼって柄の長いスポンジで対応する。

 猛反対していたボランティアのリーダーも「若い連中がそこまで言うのなら」と思いを汲んでくれました。

 私としてもキチンとした提案書として実行計画をまとめて博物館側と話し合い、2004年に実施しました。その後の一例を紹介しておきます。

 ↓ 航空歴史館総目次 特集記事国産旅客機YS-11 [5]各地の展示機情報からコピー

(かかみがはら航空宇宙科学博物館1996年開館)のYS-11 JA8731


YS-11の洗浄 
 かかみがはら航空宇宙科学博物館支援ボランティア小山澄人

 2006年12月16日土曜日、ボランティア・グループ有志によるYS-11 JA8731の清掃(水洗い)が実施されました。前回の水洗いから2年経ち、特に日陰になる左舷側の汚れが酷くなり見るに耐えない状態でした。ボランティアの皆さんによる、バケツと窓洗い用の柄付スポンジ、水撒きホースを使っての、2時間程度の只の水洗いでしたが、外注による再塗装のP-2Jと並んで見違えるように綺麗になりました。

清掃前 撮影2006/12/03


清掃中 2006/12/16



清掃後 2006/12/16

 

・ ボランティアによる清掃が定着 市役所の再塗装予算委計上につながる

 このYS-11の水洗い実施以降、他の屋外展示機でも定期的に実施するようになり 、いまでは各務原ではすっかり定着したような感じです。

 自分達で清掃をすることによって展示機に愛着が沸き、それまで以上に機体を大事にしようという雰囲気もでてきました。

 各務原ではボランティアの方々の地道で献身的な活動と、展示機を大事にしよう、維持していこうという姿勢を周囲に見せたということが、絶望的とも思われたのP-2JUS-1A再塗装の予算化・執行に繋がっていったのだと思います。

 当たり前のことですが、誰も、航空機ファンすら大事にしようとしないものの維持に、行政が予算をつける訳が無いのですから。

 他所の展示機でも、管理者から「触るな」と言われればそれまでですが、筋さえキチンと通しさえすれば、難しいことなど何もないと思いますが、いかがでしょうか。

 飛行機だといっても、各務原の活動では何も特別なことはしていません。何も難しいことはしていません。 毎週やる必要もありません。

 ほんの少しの「やる気」と半年に1回、半日ぐらいの時間を割くだけでよいのです。

 ポイントは「誰か一人が腰をあげる」ことでしょうかね。各務原では、それが偶々私だった、というだけのことです。

かかみがはら航空宇宙科学博物館支援ボランティアについて 小山

 日本国内最大級の航空宇宙博物館である「かかみがはら航空宇宙科学博物館」の特徴のひとつに、博物館の運営をサポートするボランティア制度があります。

博物館支援ボランティアの活動内容

  • 展示機の説明

  • 展示場の見回り

  • 展示機/展示物のメンテナンス

  • 紙飛行機製作指導

  • ヘリコプター・シミュレーターの操縦指導

  • 博物館で催されるイベントのお手伝い

 などなど・・・

※ 修復工房での航空機修復・復元作業は、現在活動休止中です。

 活動時間は博物館の開館時間内(9:30〜16:30)で、特に決まってはいません。午前中だけとか、午後に2時間だけということもあります。ただし、紙飛行機製作指導やヘリコプター・シミュレータ操縦指導はお客さん相手なので、ある程度のスケジュール管理がされます。


 ちなみに私は修復工房内での作業や屋内外の展示機の簡単なメンテナンス等を主な活動にしてきました。現在は、週末(土日)に、展示機のメンテナンスと展示機説明を行っています。

ボランティアに参加するには

博物館のインフォメーションでボランティアに参加したい旨を申し出ましょう。

※ 事前に博物館に電話で連絡をしておくとよいです。
※ また、私はボランティアの取り纏め役ではありませんが、
※ ボランティア参加の仲介はできますので、
※ 一緒に活動していただける方は遠慮なく連絡ください。

所定の入会申込書を提出し、博物館ボランティアとして登録されればOKです

日替わりメモ100110番 10

○ 続々 飛行機というものは、かくも冷遇される存在か

 更に続けます。自治体の公園などにある展示航空機について、お役人が「無関心である」と切り捨てたいものが多いのは確かです。ただ、そこまで断言していいかどうかとなりますと、例えば、担当課はひどい現状を放置できないとして、毎年予算を要求しているが、財政課や市長の査定で落されている、といった内部事情もあるでしょう。

 主管課も財政課も市長にも同情すべき点はあります。金がないから‥

 ならばです。金がないなら知恵を出そう。
 私が伊達市長なら、やながわ希望の森公園にあるホンダのパイパーとセスナを見守ってくれるボランティアを募集します。伊達市内にもヒコーキマニアが居るでしょうし、ホンダ系列の人に参加を求めてもいい、年に数回、機体の掃除をやって貰いましょう。市の負担は、モップや洗剤や 昼飯代や、給水車を提供するくらいで済むと思うのですが、如何なものでしょう。

 福島県伊達方式が全国に広まれば知名度もあがって一石二鳥ではありませんか。

 

日替わりメモ100109番

○ 続 飛行機というものは、かくも冷遇される存在か

 昨日はあのように書き、伊達市長さんにも知らせましたが、後で冷静に考えてみると、行政人も一般の人も、航空機は金属製だから展示後に手を加える必要があるなどとは思っていないのではないか、あのように汚れた姿を当り前のように見ているのではないかと気付きました。

 去年、当方の指摘によってお詫びがきた茨城県フラワーパークA3009にしても、展示機とは唯そこに置いてあるだけのものであって、荒らされるのをいけないことだとする空気が管理者以下職員になかったのでしょう。つまり、悪意や怠慢で展示航空機を冷遇しているのではなく、汚れや少々の破損は当たり前という無関心なのです。

 その無関心が、汚れて壊れた航空機を見る人々に、なんだヒコーキ屋というのはこの程度のものかと笑われ、(おおげさに言えば)健全な航空思想の普及を妨げているのではないかと憂います。

 しかし、無関心がすべてではありません。去年取上げた青森県平川市のビーチクラフトB-65A2125や愛媛県西予市のロッキードF-104DJA7304のように常に関心をもって管理し、当方の願いにも誠実に対応してくれる役所もあります。

 押しなべて言うなら、ヒコーキマニアのみんなが、情けないなあ―だけで済まさずに、役所へどんどん知らせてやりましょう。それで展示保存機の多くが生き返るのではないかということです。知事や市長村長に手紙やメールを出して叱られることはありません。ダメもと覚悟も必要ですが、厳しい財政状況にあるからこそ、一層もの申しておくべきなのです。

 こんなことを主張するのは、インターネット航空雑誌ヒコーキ雲だけですかねえ!

 

日替わりメモ100108番

○ 飛行機というものは、かくも冷遇される存在か
   A2607 航空史探検博物館 福島県
伊達市  やながわ希望の森公園の展示機

  『春に桜吹雪が舞い、夏は水芭蕉とつつじが緑一色に染めます。秋にはいも煮会や紅葉狩りが楽しめる場所です。その付近には冬も利用できる屋内プールなど、さまざまな自然や施設が待っています。』 と伊達市がやながわ希望の森公園を宣伝をしておりますが、ヒコーキマニアは、いやはや何と申しましょうか、約20年間、洗浄しても元に戻らないほど汚れ放題に冷遇されている飛行機を見ますと、伊達市民が本当に楽しんでいる公園なのかと疑いたくなります。

 一昨年12月12日付の日替わりメモを再掲しておきます。アンダーラインは今回引きました。

○ やながわ希望の森公園の本田航空機 
 永年のひどい汚れや風防の割れや説明板文字の剥離等があるものの、しっかりした台座に乗っていて、さすが[寄贈 本田航空株式会社]の銘板に恥じない展示コンセプトを感じさせます。2機の軽飛行機を編隊で離陸させるかのように並べて展示しているのは、日本ではここだけではないでしょうか。確かな理念とビジョンに向かって歩まれた本田宗一郎さんの意思が働いているように思えます。
 もし、心あるホンダ人がいるならば、宗一郎さんの意志を継いで、きれいに洗浄し、積雪になる前にシートでもかけてあげてほしいものです。もっとも、それは受け入れた伊達市(旧梁川町)の責任でしょうか。