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図書室72 掲載2014/01/22

書 評 ソリッドモデル界六十年の歴史を振り返る

名古屋三点クラブ会報 平成26年1月号

 佐伯邦昭

 

 
 書  名 名古屋三点クラブ会報 平成26年1月号

 編  集 高田和彦

 記  事 大藪勝良

 発  行 2014年1月  名古屋三点クラブ  

 体  裁 A4判 86ページ 

 非売品        

「名古屋三点クラブの歩み」記事のまとめ

  ヒコーキ雲の記事も一部載せていますというので、送られてきた名古屋三点クラブの会報をめくってみて或る感慨にうたれました。それは30年ほど前まで手掛けていた広島航空クラブニュースやヒコーキ雲刊行の記憶がまざまざと蘇ってきたからですヒコーキマニア人生録参照

  私は、航空マニアの機関誌活動の全国組織づくりに乗り出したこともありますので、高田さんが名古屋三点クラブの歴史をまとめるのに、TSMC(東京ソリッドモデルクラブ)、彩雲会、上昇クラブなどソリッドモデル界の全体の視点に立って まとめたことに目を惹かれました。

1 名古屋三点クラブ60年の歴史

  60周年というと創立は1953(昭和28)年です。ほぼ同時期には、記録・歴史派マニアによるつばさ会やマッハクラブがスタートしていて、その機関誌にはソリッドモデルの記事もたくさん発表されていました。T62参照  模型マニアと記録・歴史派マニアの間に垣根は無かったのです。

 その後の機関誌活動をたどりますと、記録・歴史派マニアの機関誌は残念ながらすべ息切れして、一部が ホームページへ移行してしまいましたが、模型マニアの紙機関誌は今に至って連綿と続いています。16ページにわたる「名古屋三点クラブの歩み」には、全国合同例会などを通じての各クラブの交流とともに時々の会報が紹介されており、下はその一例です。横のつながりを深めながら各クラブが個性を磨いてきた歴史がよく分ります。うらやましいです。
(43ページから)


(54ページから)
 

 たどっていきすと、初期の写真には学生服姿など少年や青年が多く見られますが、次第にその数が減ってきて、近年は初老以上の人ばかりというのがつらいです。女性が皆無というのも仕方がないのかな。

 

2 平成25年の名古屋三点クラブの活動状況

 もちろん、本書の主体は平成25年の活動状況のレポートであり、12回にわたる例会の模様が克明に記録されています。 年末の例会で第588回という驚異的な数字に驚いてしまいます。素晴らしい完成品や制作途次の写真とともに皆さんが批評し合う情景をみていると、世の雑事から完全に解き放たれて桃源郷に遊んでおられるんだなという気がしますが、これはヒコーキソリッドモデル界だけではなく、あらゆる趣味の世界に共通するものでしょう。 

 巻末に、丹羽八十さんによる「F-86の増槽タンクに数種類の変化がある」と「MU-2五十周年」の研究と回顧録は読みごたえがあります。彼は 、廃刊になったエアワールドへ名古屋空港の開港以来の記録を無償で提供していたことや、名古屋地区の埋もれている航空史の発掘での大発見などを紹介し、「近年、各地の経験豊富な地元航空写真愛好家達の秘蔵写真をもとに高価な写真集を作り、販売する姿勢には同調できない」と某クラブの姿勢をバッサリと切り捨てているのが面白いです。

 

3 編集、印刷、製本

 私は、ヒコーキ雲の刊行から手を引いた後も高校クラス会などの機関誌を発行していますので、編集、印刷、製本の面でも気付くことがあります。

・ まず、ボリュームが86ページと多いのに目次が無いことです。読者側とすれば、総じて雑然とした印象を受けるし、目次がない不満も残ります。
 でも、これが限界でしょうね。本業に非ざる編集人の趣味的片手間的無料配布同好誌づくりにおいては、頭書にピシッとした編集企画を立ててから作業に当たることなど無いのが当たり前であって、寄せられる原稿や材料を手当たり次第に料理するというのが現実だからです。編集終了時に全体を見直しながら目次を作る気力が残っているかどうかがサービスの分かれ目ですよ。

・ 文章と写真の割合は4対6くらいと見ます。どのソフトを使っているのか分りませんが、パソコン上で画像を割り付けてはめ込むのは相当の技術が必要です。外注なら場所を指定しておくだけで済みますが、素人編集ではその苦労は大変なものでしょう。雑然とした印象などとくさすのはもってのほかでした。

・ 印刷は、業者にやって貰ったそうです。 ヒコーキの色やデテールに一家言を持つ人々の集団ですから、恐らく皆さん満足できる印刷ではないでしょうか。高価なプリンターでやったとしても、うんざりするほど時間が掛かるし、このようなきれいな発色は期待できないからです。
 製本は、印刷屋から持ち帰ったページをホッチギスで止め、布の背表紙を貼り付けています。理解のある奥様なら手伝って貰えますよね。

 

4 下郷松郎さんの功績

1954年1月発行のつばさ会会報
名古屋三点クラブマーク

  左は、1954年1月発行のつばさ会会報に載ったつばさ会名古屋支部の報告です。1953年11月に支部が発足したそうなので、最初の例会報告でしょう。つばさ会名古屋支部は、1954年6月に名古屋三点クラブと名前を変えて独立しました。
 右の名古屋三点クラブマークは、二代目会長下郷松郎さんの作だそうです。プロによる航空会社のマークかと見間違うような味のある見事なデザインです。下郷松郎さんは、日本におけるすべての航空機の記録づくりに挑戦した記録・歴史派マニアの大先達追悼記参照)ですが、ソリッドマニア界にも大きな足跡を残していることを、この冊子で知りました。
 彼の作った模型が残っていれば、是非拝見したいものです。