掲載開始05/04/29
佐伯邦昭
関東・東海遠征記 1日目
(1)プロローグ IBEXのCRJ前回のミヤシカクマフク旅行記は鉄道やお酒の話が多くて少しふざけ 気味でした。今回は天下の首都への旅でありますので、ヒコーキ主体に緊張して書いていこうと思っておりますがどうなることやら、 途中でお腹立ちの向きは遠慮なく抗議メールを送っていただくようにお願いします。
4月16日土曜日、広島空港から成田空港へ直行便のボンバルディアCRJ-200ER(JA04RJ)に乗りました。この便は7時50分に離陸すると9時半には着きますので、国際線を利用する人にはとても便利です。この日も定員50満席でした。搭乗のためエプロンへ降りてカメラを構えますと、ご覧のようにCRJ-200ERは逆光で真っ黒、後ろを向いてA300B4-622R(JA8659)は素晴らしい朝日の順光でした。不思議なことに両機ともFairと日本エアシステムという社名変更前の塗装を残しており、撮り納めのチャンスに恵まれたのかもしれません。
離陸準備が整ってドアが閉まると例のご案内が始まります。
「本日はエイ エヌ エイ コードシェア便 アイベックス エアラインズをご利用いただきありがとうございます」とのアナウンス。
1年前の2月にCRJ-100LR(JA01RJ)に乗ったときは「本日はフェアリンクにご搭乗いただき‥」でした 。IBEXとは筆頭株主が販売している会計関係ソフトの名称だそうで、航空界にもIT旋風、なにやらこの時期お騒がせのホリエモンさんを思い出します。ANAコードシェア便というのは全日空との提携という意味でしょうか、全日空の超ワリ(どこへ飛んでも1万円)の航空券が2年連続当たりましての今回の関東・東海 遠征です。
座席は5D(インターネットで購入と同時に指定)を取りましたら、主翼は見えませんし、おまけに知多半島から太平洋へ出てからは密雲で伊豆の島々も見えず、これは大失敗でした。また、満席のために1人乗務の野田CAさんはとても忙しそうで、声をかけることもできませんでした。
しかし、それで引っ込むような佐伯ではありませんで、成田到着後、搭乗証明書を作って送ってくれるように頼んでタラップを下りたのであります。後日、客室乗務員室の近藤和子さんから丁寧なお手紙と共に自宅へ送られてきました。これでアリバイは成立です。皆さんどうもありがとうございました。この誌上を借りて御礼申し上げます。
搭乗証明書 機長さんの横文字サインが判読できませんが、上空でアナウンスを聞いた限りでは日本の方でした。
(2) 成田 航空科学博物館
九十九里浜で北へ旋回しそのまま降下して成田へ、B滑走路(暫定平行滑走路2180m)へ降りて、長い誘導路を逆方向に第2旅客ターミナルビルへ着きました。
ターンテーブルが回り始めるとトップに我がバッグが出てくるという幸運に恵まれ、バス停13番まで普通に歩いていくと、申し合わせたかのように9:41発の航空科学博物館行きの京成バスが来てくれました。1時間に1便くらいしかないので乗り逃がすと大変なのです。
運賃200円で約15分 相変わらず広大な空港の東南側を、相変わらず警備車両の多い道路を約15分で博物館正面に到着です。
早速、格納庫へ行って、今日のオープンハウス準備中の金澤さんとボランティアの皆さんに挨拶をすると、異口同音に、佐伯さん毎日ホームページを見ているよ!と体がぞくぞくするほどのうれしいお言葉が返ってきました。 〔 佐伯を喜ばせるにゃお金は要らぬ 毎日HP見てると言えば良い 〕
ボーイング747−400大型可動模型
航空科学博物館が目玉として売り出し中のボーイング747-400世界最大の可動模型です。私も15分間のブリーフイングを受けて操縦の原理を勉強し、成田〜ソウルを5分間 操縦しました。
ブリーフイング
ブリーフイング用パネルの1枚
証明書交付手数料300円也説明員の方はブリーフイングが終わるとキャプテンとコパイ席の後ろでお客さんの操縦を手伝いますが、午前中というのにたいへんお疲れの様子で気の毒でした。また、 シミュレーションは模型のレスポンスに時間がかかり、操縦しているという実感にやや難点を感じました。長続きするためには改善の必要があると思いますね。
相模原市の模型会社に作らせたという何千万円かの模型で、博物館の目玉にふさわしいといえばそのとおりです。しかし、その場所に開館当時からあったスケルトンの富士FA200 JA3528がお蔵入りしてしまいましたが、それでいいのかな?とも思いました。
格納庫でのオープンハウス
私がわざわざ土曜日に成田便を利用するのは、このオープンハウスを見たいためです。その名のとおり格納庫 (いうなれば倉庫兼作業場)をオープンするので、がらくたみたいな収蔵品の中からダイアモンドを見つけたいという下心があります。
今回もありました。「昨日、届いたばかりですよ」というスーパーカブJA3117です。新聞社でも航空大学校でも使っていた小型機のベストセラー、パイパーPA-18はもう日本にはないのかと思っていましたが、日本学生航空連盟機が北九州市の博物館にあったのだそうで、 ちゃんと塗りなおされて整備すれば飛べそうな姿で届いていたのには感激しました。
学連では、グライダー曳航のほかに串型座席を利用して操縦訓練にも使っていたようで、操縦桿は前後席にあり、スロットルも左の窓際のところに前後連動して動くように特設してあります。計器盤やパネルのスイッチ類はこれが原点といわんばかりの簡単なものですから、私のような頭と運動神経の鈍い者にもすぐに操縦ができたかもしれません。
スーパーカブの写真は千葉県A3502の方へ載せました。ひとつだけ、グライダー曳航装置をここへ置いておきます。
尾輪のダンパー脚柱の先にロープを引っ掛けるフックがあり、解除のワイヤーをひくとフックがだらんと下がってロープがはずれるという仕掛けです。
今まで空中でどうやって切り離すのか知りたかったのですが、見てみれば実に簡単な理屈でした。最近の曳航も同じなのでしょうか。
格納庫には、ボーイング737の可動パラポラアンテナ付きのレドームも入っていました。オープンハウスの主体は毎回20人の希望者に、さまざまな実験器具を使って飛行の原理を教えるもので、そのうちこのパラポラアンテナも自動で回るようにして見て貰うのだということでした。ここにくるお客の99%はレドームの中で傘が回っていることを知らないでしょうから、皆さんどんな顔をするか楽しみです。
このように、座学にあらず、諸装置を使い、使わせての航空教室は世界中でここだけではないでしょうか。その模様を今回も写真を追加しましたので是非千葉県A3502で見てください。
ボランティアの中に海上自衛隊のMさんのお顔が見えました。煙風洞実験装置を使って 翼の揚力発生の解説を試みていましたが、帰りに 同乗させてもらった車の中で、彼は「子どもたちの中から一人でも将来航空界に進 む人が現れてくれればと願って、ボランティアを買ってでました」と話していました。
本当に、皆さんの願望は、ライカミングがうなる傍で操縦桿でN-62模型を傾けたり、轟音を発するアリソン 250−C20型ジェット エンジンに目を丸くしている子どもたちの心の中に、確実に届いていると思います。
図書室―木村秀政文庫
航空科学博物館の図書室に木村秀政文庫という書棚があります。あれだけの大家ですから東西の航空文献が大量にあるのかと思ったら、ご自分の著書も含めて数十冊程度、詳しいマニアなら知っている本が殆んどです。蔵書の一部に過ぎないと思いますが、中には入手不可能なものもあります。
木村秀政文庫以外では、ざっと見て戦前の古書1割、戦後から今日まで発行されている図書9割というところでしょうか、分類や並べ方には工夫の余地があるとはいうものの、東京新橋の航空図書館よりも広いし、ビデオ装置なども完備しています。毎日通って漁ってみたいですね。
でも、わが国の航空関係図書館の現状はどうなんでしょうか。航空講座をもつ大学や専門学校の図書室は覗いたことがありませんが、蔵書も多く、分類コード付けや検索機能がしっかりしており、収蔵や閲覧環境も良好という航空専門図書館が生まれたら、私も死後蔵書一切を寄付するように遺言しておくのですが‥。
(3) 潟Wャムコ東京整備工場
成田空港北西の野毛平という大きな臨空工業団地の中にJAMCOの東京工場があります。博物館展示課の金澤さんの特別の計らいで、機体整備グループ長の塙 隆之さんに見学の案内をしていただきました。
ここでは、大型旅客機のタイヤの再生を一手に引き受けています。羽田のANAやJAL整備工場へ行くといつでも交換できるようにたくさんの車輪が置いてありますが、それらはJAMCOで再生されたものです。物によって最大6回くらいは再生するそうです。
傷ついたり擦り減ったりした車輪が、厳重な品質管理のもとに数十の工程を経て新品同様に仕上がっていく様は驚きと感動です。日本の大型旅客機の車輪の経歴は、すべてこの工場のコンピューターが記憶しているということで、たかが車輪、されど車輪、ため息がでます。
エアバスA380の構造材など
4月27日に超大型旅客機エアバスA380初飛行のニュースに接しましたが、その機体の垂直尾翼用構造部材、2階席用フロアクロスビーム、ギャレー、後部電子機器収納棚をJAMCOで製作しています。その中の2階席用フロアクロスビームの実物がPR室に展示してあります。
これをA380胴体の中に65本わたして2階フロアを支えます。
炭素繊維複合材で1本がわずか15キロ、こんなもので大丈夫かなと思うほど軽いです。さすがに1階フロアの桁はアルミ合金製 だそうですが 。
いろいろ紹介すればキリがなくなってしまいますが、ここでは防衛庁向けH-60ヘリコプターのフレームも生産していますし、ギャレーやトイレなどの製造と修理もやっています。
左は、生ビールの装置です。旅客機で生ビールをと各社に売り込んだそうですが、商談いまだ整わず。
地元の祭典で実演したら大成功だったというのですがね。右は玄関にあるN-62ラジコン機のそばで記念撮影。木村博士渾身の設計になる日大N-62イーグレット小型機は、JAMCO前身の伊藤忠航空機整備鰍ナ生産したのでした。
続く
(4) 京急電車と金沢文庫
(5) 海軍航空発祥の地
(6) ダイエー横須賀店
(7) 横濱海軍航空隊隊門と格納庫跡
(8) 飛行機屋
(9) 釣船あさなぎ丸
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