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台東区上野

国立科学博物館
フライトシミュレーター 
A3606-1 その他の展示品等
A3601-2 零式艦上戦闘機21型  日本での修復、展示変遷、各部詳細   -

:現地に展示または保存中のもの ×:過去のもの :現状不明

 

A3606-3 東京都 Tokyo Metropolitan  台東区 国立科学博物館
             
× コンベアCV440のフライトシミュレーター

経歴

1980/03 導入
1993/11 廃棄処分

撮影1989年ごろ 操縦席と客席 井上 剛


拡大 残念ながら説明文字は判読不能です



操縦席 

・ 井上さんの記憶

 写真は、A3601-2のEにある零式艦上戦闘機と同じネガの中にあります。私は零戦よりも寧ろシミュレータ体験目当てで科博に出向きました。

 希望者から割り箸を使った籤引きで操縦体験者を選び、選から漏れた希望者は操縦席後方に設けられた客席に座るようになっていました。幸い私が操縦させて貰えることになり、私が左席に、指導者(パイロットの制服を着用した年配の方でした)が右席に着座しました。

 その際、このシミュレータが全日空から寄贈されたコンベア機のものと聞きました。
 

・ 国立科学博物館広報担当の関根さんの調査結果

 CV440のフライトシュミレーターについて、過去の物品台帳を調べ、また理工学研究部で航空史研究者に確認致しました。展示造作の一部として展示室に設置しておりました。日本無線株式会社に製作を依頼し体験型展示機器のひとつとして導入されたものとのことです。

 長期の稼働により劣化したこと、また標本資料ではなく、あくまで体験展示用に製作をしたものであったため、展示更新の際に当該シュミレーターは廃棄されたそうです。台帳を調べましたところ、昭和553月導入、平成511月廃棄となっております。


(注) 調査結果では、体験展示用として日本無線株式会社に製作を依頼したとありますが、操縦席写真を見る限りでは明らかに本職へのフライトシュミレーターとしか思えませんので、全日空から寄贈されたフライトシュミレーターに、客席などを付加して素人操作に適するように日本無線に加工させたのではないかと推察します。(佐伯)


 ▽ エアバス320モデルのフライトシミュレーター

提供 国立科学博物館  現在は収蔵庫に保管

30分間は自動モードで画面を見るだけで、その後9人の搭乗者全員が1分ずつ着陸とタッチアンドゴーをやらせてもらえるだけの装置

日替わりメモ2011/02/11から転記

〇 国立科学博物館のフライトシミュレーター

 国立科学博物館の旧館時代には、零戦だけでなくモ式やヘリコプターの実機が展示されており、更にはフライトシミュレーターを置いて希望者に体験させていたのですね。遅ればせながらそのCV440とA320のシミュレーターをアップしました。

 A320のは、実機とは似ても似つかない簡略化されたコックピットになっていますが、CV440の方は、実機そのものの計器配列です。科博の古い台帳に日本無線株式会社製作と載っているらしいですが、写真を見る限りでは、無線会社が博物館用にあれだけの操縦席を製作したとはとても思えませんので、ここは、井上さんがシミュレーションを体験した時に「全日空から寄贈」と聞いていますので、コックピットは本物でしょう。それを基にして素人操作用の展示物に仕上げたのが日本無線株式会社だろうと推察しました。

 科博によりますと、CV440は標本資料ではないとして既に廃棄してしまったそうです。全日空から寄贈のシミュレーターなら立派な標本資料であった訳で、こんなものをいとも簡単に捨ててしまう博物館の頭が理解できません。

 因みに、当方で把握しているフライトシミュレーター類は、次のとおりです。(自衛隊と航空学校は除く)

A1152 札幌市青少年科学館  DC-6操作手順訓練機 (展示)
A3502 千葉県 航空科学博物館 DC-8シミュレーター (体験)
A3630-3  国立科学博物館 CV440シミュレーター(廃棄) A320シミュレーター (収納庫) 
未掲載 横浜市 三菱みなとみらい技術館 MH2000シミュレーター (体験)
音楽館へ 小牧市 名古屋空港航空館 YS-11トレーナー (展示)
A4202 石川県立航空プラザ  YS-11シミュレーター (体験)
A8109 福岡県 音楽館  YS-11トレーナー (展示)
A8403 大分市 日本文理大学 ボーイング747整備士訓練用シミュレーター (教材)

 ヒコーキに興味を持つ人のみならず、多くの人間は操縦桿を握って大空を飛んでみたいという欲求を抱いているものです。それを少しでも叶えてくれるのがフライトシミュレーターです。自衛隊航空祭でシミュレーター体験搭乗の整理券があっというまに無くなり、やむを得ず機内見学に長蛇の列ができるのはいつもの風景ですよね。

 いやしくも国立科学を名乗る博物館が、それを廃棄したりお蔵入りさせたりするとは何事ぞと言いたくなります。

 ついでに言っておきたいことがあります。

・ 空と宇宙展
 同館で開かれた飛べ100年の夢 空と宇宙展は6日に終わりましたが、11月に書評でとりあげたように、 ”実機の展示が無い航空展” ”宇宙におんぶにだっこ”  の展覧会でありました。たった1度しか巡り合わない100年という節目に、日本のナショナルミュージアムが実機の展示もない、宇宙に寄りかかってのイベントしかできないという、お金も知恵もないわが国の現状をとても悲しく思うと書きました。

 もちろん、反論はあります。どこに隠してあったのか戦中戦前の軍用機資料などが初めて公開されたというような‥ それなりに貴重な歴史遺産が陽の目を見たことは確からしいです。

 しかし、それらは専門家やマニアックな知識を求める人たち向けであって、一般入場者に航空思想を高めてもらうという目的にいかほどの貢献をしたのでしょうか。壮大なロマンのイトカワ・はやぶさの前に、ニッポンの航空機発達史がどれほど体系的に理解されたでしょうか。千載一遇のチャンスにみすみす航空思想の普及発展を逃がしたとしか言いようがありません。

 自然科学と人文科学偏重の国立科学博物館は、もっと工学系に力を入れてもらいたいし、航空分野で言えば、少なくとも航空工学を修めた学芸員を複数配置して貰いたいです。いつも言っていますように、外国人が、ニッポンのNational Air Museumを訪ねてきたら自信をもって国立科学博物館の航空機会場へ案内ができるようにしてほしい!