ロッキードT-33Aの防眩(つや消し)塗装について
問題の発端
福岡県田川郡添田町のロッキードT-33A 81-5358(A8112参照)の翼端タンクの内側の色について疑問があり、皆さんに質問します。
答1 にがうり
T-33Aのチップタンク内側塗装ですが、普通は艶消し黒
に近いように見えます。チップタンク内側色が分かる1枚を送ります。
答2 模型では かつお
停止しているT-33Aを地上で写す場合、部位的にチップタンク内側はカメラの盲点かも
しれません。参考までに模型組立説明書の指定に従った塗装の写真を送ります。
答3 NAYER
ヒコーキ雲にもT33の翼端タンクの内側をはっきり確認できる画像が何枚もあります。
退役機で正しい色ではないかもしれませんが、特によくわかるのはかかみがはら航空宇宙博物館のページの「◎ 富士T-1B 05-5810」の項目の2枚目です。T−1の項目ですが、T−33Aの操縦席脇から撮影した画像があり、右主翼とタンク内側がはっきりと写っております。色も判別できると思われます。
現役時代のものでも.航空実験団バラエティ豊かな頃の下から2枚目のT33Aはタンク内側がはっきり見えます。大きなサイズの元画像があれば確実に色が判別できるかと思われます。
ちなみに、古いハセガワ製プラモデル「1/72
ロッキードT33A」の説明書では、タンク内側がオリーブドラブとなっており、後にリニューアルされ再発売となったモデルではダークグリーンとなっておりました。
余談ですが、タンク外側の色にもバリエーションがあるようで、蛍光オレンジが一般的ですが、後ろ1/3が銀色というものなどがあるようです。
私が撮影した画像・写真を見ても確かに現役の実機はタンクの内側が陸上自衛隊機のような緑系の色でしたが、退役保存機には黒もありました。先日退役したKV107やMU2もT33と同じ様なダークグリーンでした。
このT33のタンク内側の謎と同じ事がF86Dにも言えそうです。F86Dのアンチグレアとレドームの色は、現役時代の正しい色は「深緑」と「黒」だったと思いますが、各地の展示機はアンチグレアが黒、青、緑などと様々で、レドームも黒や茶でバラバラです。模型を作る際、なにも資料がない時にこういう保存機を参考にして良いものか悩んだりします。
それだけに、佐伯さんのHPは貴重な機体の写真がたくさんあり、仮にその機体の色が正しくないとしても複数保存されている同型を見比べて、ある程度の推測ができるため、模型の塗色を決める重要な手段として活用させていただいております。
自分のように模型作りを趣味とする人ならこういう細部の写真を大量に、様々な角度から撮影しているかと思われますので、友人知人にそういう方がいらっしゃるのでしたら聞いてみては如何でしょうか?
また、世界の傑作機シリーズなど特定の機種の写真ばかりを載せた雑誌がいくつか出版されていますので、その中のT33のものを見れば問題も一気に解決するのではないでしょうか?
答4 T-33Aの専門書について 伊藤憲一
別冊航空情報
自衛隊機メモリアルシリーズ1「ロッキード/川崎T−33A」
1995年12月2日
酣燈社発行 A4版144ページ 写真は白黒のみ
翼端タンクの塗装色については137ページに次の記述があります。この記述から、内側は、OD色とは似ていますが、ちょっとちがう濃い緑色だったようですね。
・・・内側は濃い緑で塗装され、外側はディグロ(蛍光を発する顔料)テープが貼られている。 しかし、各飛行隊でテープを取り付けていたため、全体を貼り付けたり、半分を貼り付けたりと異なっている。最近は蛍光オレンジを塗装している・・・
答5 予備三曹
T-33Aのタンクの色の件ですが、7年間、毎日33のお世話をしていた私としては、やはり濃い緑と言うよりは、陸自の戦車などに塗られているOD(オリーブドラブ)色に近い様な気がします。
OD色の定義は知りませんが、手元にある陸自の戦闘糧食の缶詰の色が当時、良く目にした33のチップの裏側の色に近いのですよね。
以下はタンクの余談です・・・
タンクの内側の塗装は、燃料補給時のノズルが当たるので、給油口近くのタンクの先端が空気の摩擦で塗装が剥がれます。そこで、瓶に入った塗料を筆でペタペタと塗りました。
工作小隊の塗装専門家(尾翼にマークを入れたりする部署)が調合するので、細かい色彩の呼び方は知りません。
時に、横着をして瓶の中の塗料を良く混ぜないと、艶消しの成分が沈殿していて、乾いた後もテカテカ光り、ある日パイロットから「飛行中に目に付いて仕方ないから、塗りなおしてくれない
か?」とクレームが付いたことがありました。
また、外側の蛍光色は、IRANで全部剥がして検査するため、川崎重工業から帰って来る機体は、後ろ半分が貼られていません。
航空団などの機体は、面倒なのでそのまま飛んでいる機体もありました。
撮影:北川喜平 『世界の傑作機 旧版No.63』
(転載許可済み)
写真は、浜松に着陸する第1航空団第33教育飛行隊のT-33Aで、内側のOD塗装
の色と、外側の蛍光が半分しかない状態が良く分かります。
なお、この蛍光塗料とは、3M住友スリーエム製のスコッチカルフィルム(我々はスコッチカルテープと呼んでいた)のことで、フィルムを型紙通りに切って、タンクの後方に貼り付けるものです。貼り合わせで段の出来る場所には、、セメダインの様な透明の液体でシールして、空気摩擦でも剥がれないようにします。
余ったフィルムで、ヘルメットにネームを貼ったり、飛行隊によっては、キャノピー脇に機付長のネームをはったりしていました。
この33の大きなタンクは、ノータンクで飛ぶと、横滑りしやすくなり直進安定性にも若干寄与しているとパイロットから聞いた事がありました。
結論 佐伯
(下記で訂正)
皆さん、ありがとうございました。 改めて添田の写真を詳しく見てみますと、キャノピー前の防眩塗装とタンク内側が同じ青みがかった色であり、文字の黒とは明らかに違います。よって、予備
三曹さんの言われる艶消しのOD(オリーブドラブ)色が退色して、このような色になったものと断定いたします。
参考 ウィキペディア(Wikipedia)より
OD(オリーブドラブ)色とは
通常は黒と黄(または茶色と緑)の塗料を1:1で混合して作られるが、生産国や生産時期によってこの比率に差が生じる場合もあるので注意を要する。(事実、模型用塗料などでも、国や時期によって数種類のバリエーションがある。)
OD色との結論に反対します N.P.C.
T−33のチップタンクの内側ですがOD色ではなくダークグリーンです。
モデルアート1997年7月号増刊「航空自衛隊の塗装とマーキング」にFS34079 別名ミージアムグリーンと記載しているし、自分も現役時代に確認しているので確かです。
模型用の塗料ではGSIクレオスの309番がズバリの色です。
ちなみにT-33Aのアンチグレアもこの色ですし、あとMU-2のレドームとかベトナム迷彩の3色の中の一色でもあります(濃い方のグリーンです)
色というのは写真で判断するのは難しいですよね。光の具合とかで違う色に見えますから。またその色をなんと表現するか(見た人が何色と判断するか)でも違いますからね。
第7航空団第305飛行隊 T-33Aのチップタンク内側 撮影1987/09 百里基地 N.P.C.
モデルアート1997年7月号増刊「航空自衛隊の塗装とマーキング」には、他の航空自衛隊機の塗装色もガイドがあり古本を購入されるのであればかなりの資料価値が有ると思います。
ダークグリーンに決定 佐伯 決定
タンクの内側は、OD色ではなくダークグリーンに決定しました。
N.P.C.さんの詳細な指摘と、NAYERさんの言うように、ハセガワの1/72プラモデルの説明書が旧版のオリーブドラブから再発売版でダークグリーンとなっていること等からです。
OD色に近いのではと見ていた予備三曹さんの飛行隊は、全国のT-33Aの寄せ集め部隊のようなもので、那覇の塩害塗装の機なども来ており、退色が進んだT-33Aばかり目にしていたので、公式な色の認識をすることがなかったようです。模型マニアでもない限り、無理もない話です。
しかし、T-33Aの翼端タンクの色で、これだけの議論ができまして、各地の展示機などを見る目が違ってくるし、再塗装のアドバイスもできるようになりました。ありがとうございました。
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つや消し黒
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